会社を若く保つために、とにかく自分が60歳で社長を退くことが大事。

何をやるかは決まっていないけど、でも辞める。


腕時計のカバーガラスを作っていた会社を先代から引き継ぎ、コロナ禍でも年商6億を維持する企業に育てた伸英さんは、2015年にはすでにサイテックという会社を設立し、次のステージを模索していました。



昨年8月、計画通りに60歳で後進に道を譲り、そのサイテックで始めたのは、

「研修を出前する事業」でした。

シアターエデュケーションとの出会い


 秋田県には、わらび座という素晴らしい劇団があります。


コロナで演劇自体の機会が失われ、存続の危機に瀕していますが、なんとか劇団員を守ろうと考えた山川前社長は、彼らの働く場所を探して奔走していました。


そんなわらび座山川前社長から声を掛けられ、斉藤光学製作所も、劇団員を会社に招き入れることに。


劇団員に何をさせるか?



ここで、発揮されたのが伸英さん流のマネージメントです。


斉藤光学製作所は、ガラス工学・電子部品、半導体基板研磨を行う製造業です。


普通に考えたら、今の会社の仕事の中に劇団員を入り込ませ、できそうなことをやってもらおうとするのではないかと思います。


でも、伸英さんは、

せっかくの俳優さんに、何をしてもらったらその人も会社も活きるか?

と考えました。


そして、コミュニケーションの研修を社内でやってもらうことにしたのです。


シアターエデュケーションとは


もともと、わらび座は社員研修事業として「シアターエデュケーション」を実施していて、大手の企業からも採用されています。


これは、劇団員が演劇の訓練として日頃行っている手法を基に作られた研修プログラム。


観劇+食事+宿泊のセットで提供されています。


伸英さんはこの中からそのコミュニケーション力を高めるためのプログラムだけを抜き取り、俳優さんと話し合いながら自分の会社にあった研修の形を作りました。


そして、社内研修として実施したのです。


これで社員が変わっていったことを実感した伸英さんは、CSRとして他の企業や組織にもこのプログラムを実施する機会を無償で提供しました。


すると、それら会社からも喜びや感謝の声が。



これに手ごたえを感じ、自分の次なるミッションの方向が定まりました。


もし、自分の会社に来てくれた俳優さんに、コピー取りやお掃除などばかりをさせていたら?



俳優さんたちも自分の能力を発揮できないし、会社にとっての生産性向上にはつながりません。


この「人を生かす」という考え方があったから、全てがHAPPYになったのです。


いろんなところで、「人が大事」というと、「それはノブさんの会社に余裕があるから言えるんだよ」と愚痴られるそうです。


「人が大事と言い続けて実践してきたからこそ、今があるのに」


これは、この俳優さんの活かし方ひとつを見ても、納得の言葉です。


サイテックとは


こうして2021年、「サイテック」という研修プログラム事業を行う会社が始動しました。



会社の社員教育だけにとどまらず、社会のニーズに応じて、いじめひきこもり予防を目指した子供コミュニケーションワークショップもすでに数回行っています。


コミュニケーションは才能ではなく技術


これらのワークショップを実践するとき、伸英さんは最初に丁寧に理論を説明しています。



コミュニケーションがいかに大事で、それは「才能」ではなく「技術」なんだと。


コミュニケーション力を分解し、自分の中のどこをつつけば、どの能力が向上するのか、理論的に説明します。


ざっくり「コミュニケーション能力」と言われても、「苦手」と思えば取り組むこともできません。



一つ一つ、自分の中の小さな挑戦に取り組むことで、自信をつけることができます。


理論的な知識があれば、納得して取り組んでもらえると考えています。



ユニークな会社運営


このサイテック、常勤社員がいるわけではなく、研修のメイントレーナーから商品観光PR、SNS活用、WebCM制作まで、すべてが副業集団です。


人との出会いの中で、「おっ!この人、こういう才能ある」となると、アドバイザーとして招かれ、自分の能力を発揮する機会を得て報酬を受け取り、自分の能力を磨いていくシステムです。



上も下もなく、それぞれの人が、その分野ではナンバーワンでオンリーワンです。


6月からは、美郷町生涯学習課の年間事業として子供を対象とした無料コミュニケーション教室が、ソーシャルビジネスとして始まります。


デジタルツールが発達し、コミュニケーションの取り方が変化しているからこそ、自分と他者との関係性を構築する力がますます大事。


これからどんどん忙しくなりそうです。


伸英さんの持論


伸英さんが人の話をするときにいつも出てくるのが「活性化」


一つ一つ質量をもった原子・分子に熱が加わると、爆発する現象が活性化現象です。


活性化だけを目的に事業を起こしても、そこに集まる人達に、エネルギーが無ければ、活性化も一瞬で終わってしまいます。


ひとり一人にフォーカスをあて、ひとり一人のエネルギーで活性化を、持続的に起こす事が持論です。



会社には、ヒト、モノ、カネ、情報など様々な資源がありますが、その中で、「人」だけが、中から爆発できる唯一の存在。


「人」の可能性を信じ、その起爆剤になろうとしているのが、サイテックなのです。