日本人の三大義務というと、

「教育」「勤労」「納税」と言われます。



「教育」っていうのは、憲法26条で、

  • すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、等しく教育を受ける権利がある
  • 2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする。


となっています。


つまり

日本国民は教育を受ける権利がありますよ。


その権利を守るために、親は子供に教育を受けさせる義務がありますよ。


国も、無償で教育を受けさせますよ。


ということですよね。


「納税」は?というと、憲法第30条で

  • 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。

とあります。


日本国民の生活を守りますから、そのための税金を納めてください。


ということですよね。


勤労の義務?


じゃあ、「勤労」の義務ってどういうこと?


働きたくないのに働かなければならないの?


働くことを強制されるっていうこと??



それって、いやですよね。


じゃあ、本当はどう書かれているのかを見てみると


第27条には、

  •  すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
  • 2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
  • 3 児童は、これを酷使してはならない。

とあります。


権利を有し義務を負う??どっちだよ!

 

権利?義務?


第26条では、教育を受ける権利と、受けさせる義務がありました。


権利を持っているのは子供など、義務を持っているのは保護者でした。


勤労はどうなの?と思いますよね。


第27条ができるまで


日本は、第二次世界大戦が終わってから、日本国憲法を作りました。



それまで日本が持っていたのは、「大日本帝国憲法」


これには、教育のことも書かれてないし、労働のことも書かれていません。


あるのは、納税と兵役の義務。


戦争が終わり、GHQが来て日本の民主化を進めたわけですが、当時、彼らが出してきた最初の憲法の草案には、さっきの3つの義務は入ってなかったとか。



むしろ労働は「権利」として入っていたそうです。


でも、大日本帝国憲法を見慣れた日本人は、「日本国民としての義務」が憲法に入らないのはしっくりこない気分だったようです。


そして当時、日本には

「お国のために働かないと」という右派と、

「家族との生活のために働く労働者の権利を守れ!」という左派がいました。


誰のために働くか、というのが違ってる気がしますが、そこの議論がうやむやのまま、憲法第27条に「すべての国民は、勤労する権利を有し、義務を負う」という条文が入れられました。


だから、勤労する権利を持ってるのも、勤労する義務を持っているのも、同じ人。


当時は、これでしっくり来ていたんでしょうね。


現在の解釈


現在では、法学者の中では、憲法27条は「労働の権利の条文」だという考え方が大半のようです。


国民は働く権利がありますよ。


国民に働く権利を約束したんだから、国はその権利を守りますよ。


ということで、


そのために、「こういう時はこうする」みたいなことを、労働に関する3つの法律で決めています。



労働基準法はこちら

労働組合法はこちら

労働関係調整法はこちら


つまり、日本国民はだれにも邪魔されないで、好きな仕事で働く権利があります。


その日本国民の権利を守るために、国は仕事を探す手伝いをしたり、それができなければ失業手当などでサポートします。



でも、その権利を放棄した人にまで、国はサポートしないからね。


という意味で、

「国民は勤労の義務を負う」

と付け加えられているというのが、現在の大筋の解釈です。


日本では、自分で好きな仕事を自由に選んで、その仕事で対価を得て暮らせます。


それが保証されています。


でも仕事は、雇用される人と雇用する人との契約でもあるので、いったん仕事をしたら、義務も生じます。


楽しく仕事をする権利を、守りたいですね。



参考文献

日本国憲法

日本国憲法制定の経緯における「国民の義務」

憲法第27条(労働の権利)

勤労の義務(Wikipedia)

大日本帝国憲法