田沢湖のpHは? ~「500円玉を拾って環境について考えた」の巻~
1週間前の日曜日、家族で田沢湖で遊んでいた時、砂浜で500円玉を発見しました。
左側の〇、そして、下の側面がそれです。
普通の旧500円玉と比べるとわかりますが、表面のニッケルが完全に溶けています。
まるで10円玉のような銅の色。
側面の写真でも、薄くなっているのがわかるでしょうか?
田沢湖が酸性だとは聞いていたけど、こんなにすごいの?
と思い、調べてみました。
田沢湖の酸性度は?
田沢湖のpH(ペーハー)は4.4~5.17とのこと。(参照データはこちら)
中性がpH7で、数字が少なくなるほど酸性は強くなります。
酸性雨の基準がpH5.6からなので、田沢湖は酸性雨の条件を難なくクリアしています。
ニッケルはpHが5以下だと、腐食が進むそうです。
銅はニッケルより酸に強いので、ニッケルが溶けて銅がむき出しになったんですね。
泳ぐには最適?
田沢湖で泳いで大丈夫?
と思ってしまいますが、もともと皮膚を覆っている皮脂膜が弱酸性(pHは4.5〜6.0)です。
この皮脂膜が天然の化粧水とも言われ、肌を守っています。
田沢湖で泳ぐのは天然の化粧水の中で泳ぐようなものですよね。
銀のネックレスは、外したほうがいいかも。
どうして田沢湖は酸性?
どうして田沢湖が酸性なのかというと、考えられるのは3つ。
- 玉川温泉水が流れているから。
- カルデラ湖だから。
- 雨が酸性だから。
1.玉川温泉が流れているから
玉川温泉はpH1.1。
薄められているとはいえ、この強酸性の水源から水が流れ込んでいるので、
田沢湖は酸性度が強くなってるらしいです。
田沢湖は、温泉水みたいなものですね。
2.カルデラ湖だから
田沢湖は180万年~140万年前の噴火でできたカルデラ湖だと言われています。
カルデラ湖ができる時の噴火では、二酸化硫黄などの火山ガスが出ますから、これが湖水に溶け込んで酸性の状態を作ります。
3.雨が酸性だから
気象庁は、日本の岩手県の大気環境観測所と小笠原諸島の南鳥島観測所で、雨の酸性度の観測を行っていました。
人の暮らしに影響を受けるのが、岩手県の大気環境観測所のデータ、人の影響が比較的少ないのが南鳥島観測所のデータとしています。
そのデータを見ると、人の暮らしの影響を強く受ける岩手県綾里地域の雨そのものが、すでに田沢湖と同じような酸性度です。
田沢湖に入ってくる水は、酸性の川と酸性の雨だけなので、どう転んでも結局酸性ですね。
他の湖も酸性なの?
緑が沢山あって光合成が行われれば、植物に二酸化炭素が取り込まれて、酸性度は下がります。
通常、川の水はほぼ中性。
水草が多いところでは、光合成のせいで日中の川の水がアルカリ性になっていることもあるそうです。
殆どの湖は、こうした川の水が入ってきて、またどこかの川に流れているので、田沢湖のような酸性にはならないようです。
植物の力って、ありがたいです。
田沢湖を中性にするには、どれぐらいの真水が必要?
酸性度が10分の一になるとpHが1上がります。
田沢湖を真水で薄めたとして、pHを1上げるのに必要な真水は田沢湖の水量の10倍です。
田沢湖は日本一深い423.4m。
水量は7.2億トンですから、pHを1上げるために必要な真水は72億トン!!
一瞬pHが上がっても、すぐに酸性雨も酸性川も入ってきますから、その量をずっと注ぎ込み続けなければいけません。
現在は、酸性度を下げるために、pH値12の強アルカリ性の物質を流し込み続けています。
悩ましいですね。
田沢湖も、昔は、今ほど酸性度が強くはなかったので、魚もたくさん棲んでいたそうです。
そんな時代に戻すことができないほど、地球の水が酸性化し、それがますます進んでいるなんて、昔の人に申し訳ない気がします。