「売り上げは落ちているけど、何が悪いかわからない。」と漠然と考えている経営者の方は、意外と多いようです。

「経営者の仕事は問題を見つけることであって、問題さえわかったら、あとは専門家に任せればよい」と、松下幸之助さんも言っています。

でも、そもそも、今抱えている問題を、しっかり言葉にしてみることはなかなかありません。

生まれて初めて見た食べ物は、どんな味がするのか全く分かりませんが、材料に何が使われて、どんな調理方法かがわかれば、うっすらと、その食べ物の味が想像できます。

問題の構造がわかると、お悩みは「解決すべき問題」に形を変え、次のステップに進めます。

今回は「問題」の正体を考えます。

「問題」と「課題」の違いとは

まず、「問題」と「課題」の違いから。

一般的には、「問題」を見つけて、その解決のためにするべきことが「課題」です。

例えば、「いつも会社に遅刻する」というのが「問題」、会社に遅刻しないために、「早起きする」とか「身支度を早くする」というのが、「課題」となります。

問題はどうやって生まれるか

太ってても、「痩せたい」と思わなければ太っていることは問題ではありません。でも一旦お医者さんから「痩せなさい」と言われたら、太っていることは突然「問題」に一転します。

これを踏まえると、もし経営者がある問題で悩んでいるとしたら、「経営者として自分の会社をどうしたいのか」という理想の姿があって、その理想の姿と現実の姿にギャップがあるということになります。

なので、「なんで悩んでいるのか?それは理想があるから」というのをまず理解して、それから自分が思い描く理想の企業が、どんな姿なのかを確認して、現実とのギャップを明確にします。

問題には型がある

そして、「問題」は3つの型に分けられます。

  1. 「おなかが痛くなった」のように、急に外から発生する発生型
  2. 「売り上げ1億達成したから次は2億だ!」みたいに、自分でさらなる高みを求めてしまうがゆえに発生する探索型
  3. 「3年後にはこうなりたい」というように自分で目標設定することで発生する設定型

解決できなければ、「問題」じゃない

そして、解決できないことは、「問題」とは呼べないようです。

そのお悩みが「問題」なのか「問題じゃない」のかを判断する必要があります。「問題じゃない」ことは、いくら悩んでも解決には至らないので、視点を変える必要があります。

ではまず、今抱えている悩みが「問題」なのか、「問題じゃないのか」を判断するために、その問題がどうして起こったかを考えます。

例えば、自動販売機で100円の飲み物を買おうとして100円玉を投入したのに何も出てこない。

この時の問題が次のものだった時のことを考えてみます。

  1. そもそも入れたお金がゲームコインだった
  2. お金が入ってからジュースが出てくるまでの間の機会の不具合
  3. 停電になった
  4. そもそも、その自動販売機、500円玉しか受け付けなかった

この場合、

  1. そもそも飲み物を手に入れる目的のために使ったお金が違っていたら、手段を間違えた「入力ミス」
  2. お金を入れるまでは良かったんだけど、そこから飲み物が出てくるまでの間に不具合があったら、過程でミスがあった「プロセスミス」
  3. お金も間違えていないし、機械も問題ないのに、急な停電で機械が動かなかったら、外から予想不能な事態が発生する「外乱」
  4. お金も間違えていないし、機械も問題ない、停電も発生していないけれど、実はこの自動販売機は他のと違って500円玉しか受け付けないものだったら、通常のルールでは問題が解決できない特殊な条件付きの状況なので、「制約条件の存在」

 というように分類することができます。

1.「入力ミス」と2.「プロセスミス」は、手段と方法を間違えなければ解決することができますが、3.「外乱」の時には自分ではどうすることもできません。4.「制約条件の存在」の場合、解決するにはその制約条件を踏まえて対応する必要があります。

つまり、3の外乱の時は、「問題として悩むべきことではない」というわけです。

では、もう一つ例を見てみます。

下の図のように「車を運転して安全に家に到着する」という理想の状態があったけれども、「事故って家に帰れない」という問題が発生したとき。

「そもそもお酒を飲んでいた」という状況で車を運転して事故を起こした場合、「体調万全の状態で車に乗り込む。」ということで、入力ミスは防げます。

そして、お酒も飲んでいなかったけど、「ブレーキとアクセルを踏み間違えた。」という場合は、「安全に運転できる技術を持って注意深く運転する。」ということで、プロセスミスは防げます。

でも、対向車の突進や、雪道は、自分がどんなに良い状態でも、事故は完全には避けられず、何か他の予防策や対応策が必要です。

制約条件を認識する

つまり、「外乱」である「対向車が突進」は、自分では解決できない問題なので、そのことを「問題」とするのではなく、視点を変えて別の問題を設定することになります。

また、「雪道で滑りやすい」などの避けられない条件があるときには、「安全に運転できる技術を持って注意深く運転する。」ということだけで頑張っても、なかなか帰宅できません。

「雪道で滑りやすいんだな」と制約条件を理解した上で、対応する必要があります。

こうした制約条件があるとき、どのように問題解決を行うかには、2つのパターンがあるようです。

  1. 制約条件を踏まえて、その中で問題解決するパターン
  2. 制約条件そのものを打破するパターン
です。

例えば、「3か月で3キロやせる」という目標があって、3か月おやつを食べないで毎日ジョギングすることを決めたとします。
でも実はあなたが「怠け者で甘いもの好き」だったら、「おやつを食べないで毎日ジョギング」は、自分の制約条件を無視した無謀な計画で、このままでは3か月で3キロの減量はほぼ不可能です。

つまり、怠け者で甘いもの好きの自分が3か月で3キロやせるとしたら、ジョギングではなくテレビを見ながら脂肪をブルブル振動させるマシンか、好きなものを食べても脂肪を燃焼してくれるサプリメントをTVショッピングで購入するほうが効率的で正しい選択と言えます(効果は保証しませんが)。この方法は、制約条件の範囲内で問題解決を図っています。

一方で、自分の「怠け者で甘いもの好き」という制約条件を踏まえたうえで、いろんな手段を使って、とうとう3か月おやつを食べないでジョギングをやり通したら、3か月の減量だけじゃなく、自分の習慣そのものを変えることができます。その時は、もうすでに甘いもの好きの怠け者では無くなってます。この方法は、制約条件そのものを打破して問題解決を図っています。

まとめ

抱えている問題の正体を知って、解決に進むためには次の順番で
  1. どんな理想があって、現実がどうなのかを把握
  2. 問題は3種類。自分の問題がどれかを認識
  3. 「外乱」なら視点を変えて、「解決できる問題」を設定
  4. 制約条件があるか、どんな制約条件かを把握
  5. 制約条件があったら、制約条件内で解決するか、制約条件を打破しなければいけないかを決定
このように、問題を俯瞰して構造化してみることで、問題の解決に一歩近づきます。

※ 今回の内容は、ダイヤモンド社の佐藤 允一 著 「問題構造学入門」を参考にしています。興味があれば読んでみて下さい。