農業の事業承継とは ~ お米作りは、暮らし?ビジネス?~
今年度も、残すところあと1ヵ月。
今年度もいろんな会社のお仕事をさせていただきましたが、農業の経営支援も結構やらせていただいています。
ここで感じているのが、農業、特に稲作農業の事業承継の難しさです。
もちろん農地法なども法的な問題もあります。
でもそれより、農業特有の地域と慣習への向き合い方の難しさがあると感じています。
営農組合というしくみ
農家の人でも、特に兼業農家の場合は子供に跡を継がせようと思う親はなかなかいません。
それに、他に仕事を持っていても、昔は60歳で定年し、自分の田んぼで米を作っていました。
でも今は、60歳では仕事はなかなか辞められず、田んぼがあっても米を作るきっかけを失う人が多いのです。
そうなると、先祖代々の田んぼの世話ができません。
それで、今は地域が共同で農業を営む営農組合の形にしているところが多くなっています。
こうした形にすれば、自分の家で農業ができなくなっても、その田んぼを営農組合に貸して地域の人達で米を作ってもらい、貸した分のお金を毎年受け取ることができます。
営農組合は、借りる土地はどんどん広がっていくのに、農業をやれる人はどんどん少なくなっている状況と言えます。
でも、実はお米って、かなり機械化が進んでいて、無農薬などにこだわらなければ、あんまり手がかからないんです。
もちろん、天候リスクや米価の変動など大変な部分も多いのですが、作業そのものは機械化で継続しやすい面があります。
農地が広いならなおさら、田植え機で苗を植えて、ドローンで農薬散布、コンバインで刈り取れば、人が苦しい姿勢で体力を使って作業をすることなくほぼすべて終わります。
だから、年を取ってもできるんですね。
これは、農林水産省が出している全国の稲作農家の年齢の分布をグラフにしたものですが、70代が一番多い。
そんなこんなで、70代になっても事業承継を考えていない人たちが、7割もいるのです。
そこに、
「自分ならもっと儲かる農業ができる!」と夢を抱いた若者が参入してきます。
- 機械が全部やってくれるんだから、自分でも大丈夫。
- これからの農業に必要なのは、経営マインドと、ITリテラシーと、マーケティングなんだから。
ということで、仲間に加わるのですが、なかなか自分の思い通りにいかなくて苦労する若者があとを絶ちません。
農業は、ビジネスじゃなくて「地域での暮らし方」だった!
地域の農家の人にとって、お米はビジネスの対象と言うよりは、自分の主食。
そして、実ったお米は地域で分配。
お米が売れたら、その利益も分配。
といった考え方が根強いなと思います。
この土地のことは、土地のみんなで話し合って決める。という文化も強いです。
でも、若い参入者の中には、違う考えの人もいます。
農業は「シゴト」です。
利益を出し、投資をし、拡大するもの。
実は私も、「アグリフロンティア」という研修機関で講義を持たせてもらっており、「農業も経営です!」と言っています。
「これから必要なのは効率化、利益率、販売戦略、ブランド化ですよ!」などと・・・
でも
それはそうなんだけど、地域で農業を行うために必要なのは、
まず「農業」という地域に根差した文化を尊重することだなと感じます。
これからの農業にとって、若手の経営感覚は大きな武器です。
だからこそ、最初は注意深く学んでほしい。
農業の事業承継に必要なのは、
正しさよりも、「納得」
スピードよりも「信頼」
結論よりも「過程」
だと感じます。
自分の知識や願望はちょっとだけ横に置いておいてもらい、まずは地域の人達から学ぶことから、始めて欲しい。
そのためにも、つなぎ役としての自分の役割も大きいなあと身が引き締まる今日この頃です。