「事業承継」と聞くと「俺はまだまだ現役だ!」と言われる経営者の方も少なくないようです。

でも、

「事業承継」=「経営者の引退」ではなく、

「事業承継」=「会社の継続」です。

事業承継のタイミング


苦楽を共にしながら人生を共に歩んできた会社、誰にも譲りたくないと思うのは当然です。

本当は、そんな大切な会社だからこそ、最適な時期に最適な相手にお嫁に出すべき。
とも言えます。

そのためには、ばりばり現役の今、事業承継を計画し、経営者自身のその後の人生設計も考えるべきだと言えます。

以前、書かせていただいた斉藤光学製作所の齊藤社長は、「60歳で定年する」と公言されていたのですが、本当に今年、60歳で会社を息子さんに引き継ぎ、ご自身でソーシャルビジネスの組織を立ち上げて、ますます生き生きと活動されています。

「人生100年」といわれるこの時代、元気な会社を元気な相手に渡し、ご自身も元気に次のステップを踏み出すという齊藤さんのような生き方は、会社にとっても社会にとっても、ご自身にとっても、とても理想的。

事業承継の現状


とはいえ、日本の現状は?



少し古い資料になりますが、上の図のように、事業を引きついで社長になった年齢で、「この年で引き継いで良かった!」と思っている人の年齢は40代が一番多いのにもかかわらず、社長になった年齢の平均は50.4歳。

この年齢は、「もっと早く引き継ぎたかった」を回答している経営者の平均年齢50.9歳とほぼ一緒です。

つまり、日本の社長の多くは、引き継いだ時に「もっと早く引き継ぎたかった」と思っているということです。

そして、その未来の社長にバトンを渡すべき現社長はというと、


上の図のように、半分以上の社長が、ずるずると引き継ぎ時期を引き延ばしてしまって、

最終的に「事業承継は難しい」という状況を、自分で作り出してしまっているようです。


このようにして、せっかく長年かけて培ってきた様々な技術やノウハウが、引き継げないまま廃業に追い込まれてしまうことが続けば、

2025年までの累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性がある

と言われています。

事業承継の支援策


こんな事態を、何とかしようと、政府もいろいろな支援策を出しています。

「ゆりかごから墓場まで」じゃないですが、

  • 事業承継を考えてもらうきっかけづくり
  • 事業承継の相談
  • 引き継ぎ先が見つからなければ、探すお手伝い
  • 廃業も含めて、引き継ぎにかかる費用の補助
  • 引き継ぐ側が新しく事業を始めるときの費用の補助

と、切れ目ないサポートを計画しています。

主なものは、

  1. 事業を引き継ぐときの税金を軽くしたり、先延ばしできるようにしたりするもの
  2. 相談しやすい場所やサービス
  3. 事業を引き継ぐときの費用を一部負担する補助金
の3つです。

今回は、3つ目の補助金の概要についてお話します。

事業承継・引継ぎ補助金とは


この補助金は、大きく2つに分かれています。
  1. 事業を引き継いだ後の新たな取り組みへの補助を行うもの
  2. 事業の継承を円滑に行うために専門家を活用するときの補助を行うもの
というものです。

1は、対象によってさらに3つに分かれています。
  1. 創業支援型:他社の経営資源を引き継いだ方への支援
  2. 経営者交代型:親族内の経営資源を引き継いだ方への支援
  3. M&A型:買収や合併で経営資源を引き継いだ方への支援
です。

補助の対象となるのは

人件費、店舗等借入費、会場借料費、設備費、原材料費、産業財産権等関連経費、謝金、旅費、外注費、委託費、マーケティング調査費、広報費

です。

廃業を伴うときには、廃業登記費、在庫処分費、解費、原状回復費、移転・移設費用などの廃業費用が含まれます。

2は、事業引継ぎ時に、士業などの専門家を活用した時の費用を補助するものです。

補助の対象となるのは

仲介手数料、デューデリジェンス費用、企業概要書作成費用等です。

廃業を伴うときには、廃業登記費、在庫処分費、解体費、原状回復費等などの廃業費用も含まれます。

補助率や金額については、次の中小企業庁の概要パンフレットをご覧ください。


政府は、この事業を10年ぐらい継続し、企業が時代とともに成長しながら、運営を続けていけるような状況を作り出したいと考えています。

事業承継には10年必要だといわれています。

まず、経営者ご自身が「〇〇歳の時に、会社をで引き継ぐぞ」と決断して、計画を立てるところから初めて見てはいかがでしょうか?