今年の4月1日から、中小企業にも「同一労働同一賃金」が適用されました。


職場には、正社員、契約社員と派遣社員、パートさんなど、様々な働き方で働いている人たちがいます。



正社員であろうが、パートさんであろうが、同じ仕事内容なら同じ賃金でしょ。

というのが、「同一労働同一賃金」です。


同一労働とは


「同一労働」は、その仕事をやるために必要な知識や技能のレベルだけじゃなく、

責任の重さというのも関係あります。


例えば、お店のバックヤードで同じように調理をしているAさんとBさん。



「卵が足りない!」となったときに、どうするか判断するのがAさんだったら、AさんとBさんの労働は同一ではないということになります。


ほかにも、お客様からのクレーム対応、スタッフのシフト管理などがあれば、責任の重さは違うということになります。



そして、人事異動の範囲も関係あります。


9時から5時まで、同じように一つのプロジェクトを任されて仕事をしているCさんとDさん。


でも、Dさんは「転勤を言い渡される可能性がある」とか、「課長になる可能性」があるなど、立場が違えば、仕事上で受けるプレッシャーも違うということで、同一労働にはなりません。



こんなふうに、仕事のむずかしさ、責任の重さ、転勤があるかないかなど、職場での立場が同じであれば、同一労働なので、同一賃金にしないといけないわけです。


同一賃金とは


「賃金」と呼んでいますが、基本給、ボーナス、通勤手当、皆勤手当てなどの「手当」と呼ばれる「お金」だけでなく、福利厚生や教育訓練など、労働者が会社から受ける一つ一つの権利も含まれます。


労働が同一じゃないときは?


AさんとBさんは「同一労働」じゃないと、「同一賃金」じゃないっていうのは分かった。


じゃあ、AさんとBさんは給料にどんなに差があってもいいのか。


というと「理にかなっていなければNG」ということになります。


つまり客観的に「なるほど」と思える理由がなければ、差をつけることはできません。


「アルバイト社員だから通勤手当はありません」と言われても、アルバイト社員も通勤しているんだから、そんな理屈は通らないわけです。



でも例えば、

  • うちの会社は、週4日以上勤務している人には、月額の定期代の金額に相当する額を通勤手当として支給しています。
  • 勤務日数が週3日以下の人には、日額の交通費に相当する額を支給しています。

ということであれば、

週5日通勤しているAさんには通勤手当が支給され、週2日しか通勤していないBさんには日額の交通費が支給されるので、「なるほど」と思え、問題ないということです。


つまり、「パートだから」とか「契約社員だから」というのは理由にならない、ということです。


今回の法改正で、「この賃金の差は、どうしてですか?」と社員に聞かれたときに、経営者は説明しなければならない義務がでてきました。


「色々大変だな」と感じる経営者の方もいるでしょう。


同一労働同一賃金は、会社のための制度


でも、これは実は、非正規社員のための制度ではなく、雇用している会社のための制度なのです。


日本は、急激な勢いで人口が減少しています。

正社員として働ける人達が、どんどん減ってくるということです。



そうなると、短期的に働ける人、週に2日しか働けない人、定年退職後の人、午前中だけ働ける人などを、正規社員と同じ貴重な戦力として活用していくことが重要になります。



これから、様々な働き方が出てくると、その人たちが不公平感なく働ける規定が必要になります。


今までの「正規社員の規定」、「短期労働者の規定」に、次々に規定を足していくと、正規社員との差が生じても、それに気づかずにいることも。


なので、社員規定を一つ作って、その中で、仕事の中身、責任、異動の可能性などを考えて待遇面に差をつけていくほうがシンプル。


こうして、多様な働き方の非正規社員を戦力として受け入れる体制を、今のうちに整えていくことで、これからの労働人口の減少に負けない企業になることができます。


非正規労働者の待遇改善を考える企業には、キャリアアップ助成金が使えます。


助成金も活用しながら、非正規労働者のモチベーションを上げて、社内全員で切磋琢磨しあう環境ができれば、生産性も高まります。


各県には「働き方改革推進支援センター」が設置されていて、社労士などの専門家が無料で相談に応じています。

こちらもぜひ、ご利用ください。