仕事が早くてなんでもこなしてしまう人って、いますよね。


そうなると、人に頼むよりも自分でやったほうが早いと考えてさっさか自分でやってしまいますし、仕事がその人に集中しがち。


それってどうなの?というのを、200年も前に「貿易」を唱えたリカードの比較優位から考えます。


リカードの比較優位とは


A国は、りんごを作るのが得意。


人件費や材料など、いろんな費用を合わせて90万円でコンテナ1個分のリンゴを作ることができます。


でも、自動車を作るのは得意ではなく、一台作るのに、100万円かかってしまいます。



B国は自動車を作るのが得意。1台作るのに40万円しかかかりません。

でも実は、りんごも、80万円もあればコンテナ1個分作ってしまいます。



というような場合、B国は自動車を作るのもリンゴを作るのも、A国より少ない費用でつくってしまうということになります。


B国は、リンゴも自動車も、A国に対して絶対的に優位です。


じゃあ、自動車もリンゴもB国で作ったほうがいいじゃん?と思いますよね。



でも、リカードは

「一つの国が、リンゴも自動車もどっちも得意なんてありえない」

と言います。


「B国が自動車を作るのが得意だったら、B国は自動車を作るべき。りんごはA国が作ればいい」

と言うのです。



上のように、B国は自動車を作るのに、リンゴを作るときの半分のコストしかかかっていません。


でもA国は自動車を作るのに、リンゴを作るときの1.1倍のコストがかかっています。


逆にりんごについて言えば、A国は自動車を作るときの9割のコストでりんごを作ることができますが、B国は自動車の2倍のコストをかけないとりんごが作れないのです。


だから、「B国は自動車を作って、りんごはA国が作ればいい」

ということになるのです。


この考え方は、「りんごも自動車もB国のほうが絶対的に優位」という絶対優位に対して、

A国はりんごが比較的優位、B国は自動車が比較的優位」という比較優位と呼ばれます。


もし、B国の持っている資源が1億円、A国が持っている資源が5千万円としたとき、

絶対優位の考え方で、B国だけが自動車もリンゴも作ったとすると、世の中に出回る価値は、自動車125台、とリンゴコンテナ62.5台分です。


仮に自動車一台と、コンテナ1個分のりんごが同じ200万円の価値とすると、世の中に3.75億円の価値が生み出されます。


一方、比較優位の考え方で、どちらの国も得意な分野に集中し、B国が自動車、A国がリンゴを作ったとすると世の中に出回る価値は、自動車250台、りんごコンテナ55.6個分、合わせて6.11億円となります。



リカードのおかげで、「得意なものを自分で作って、それ以外はほかの国から買う」という「貿易」というものが盛んになりました。


「比較優位」という考え方をもとに、競争力が低い国も貿易に参入するようになり、世の中にたくさんの価値が生まれました。


比較優位を企業にあてはめると


会社の中に、この比較優位の考え方を持ってくると、

Tさんは営業が得意、でもパソコンの入力作業もとっても速い。




総務のSさんは営業は全然できませんが、パソコンの入力作業は得意、でも実はTさんのほうが速い。



というような場合が考えられます。


こんな時も、なんでもできるTさんがパソコンの入力までやってしまうと、会社全体の利益を激減させてしまいます。


Tさんには得意な営業に集中してもらい、少し遅くても、Sさんにパソコンの入力作業をしてもらったほうが、会社全体の生産性もあがるし、TさんにとってもSさんにとっても幸せな選択と言えます。


「自分でやったほうが速いから」ではなく、「会社全体として、どういう分担が利益を押し上げるか」という視点を、社員全員が共有することが大切です。