昨年も、いろいろな企業の経営者の方とお会いする機会がありましたが、その中でも印象的な出来事があります。


それは、ほぼ同時期に、似たような製造業の会社を2社訪問することになったことです。


どちらも同じような規模、同じような取引構造でした。


でも、経営は全く違っていたのです。


A社とB社


A社の場合


A社は、元請けからの厳しい要求に応え続けてきた会社です。


「この納期で?」「この品質で?」と思うような依頼も、社長は「GO」を出します。


従業員はプレッシャーを感じながらも全員で工夫を重ね、今いる人数のままでやり切ろうとしてきています。


でも、要求に応えれば、さらに高い要求が!


それでも逃げずに挑戦し続けています。



その結果、今ではA社は元請けにとって「なくてはならない存在」に。


さらに! 単なる受注先ではなく、相談されるパートナーになっているのです。


B社の場合


B社も、高い技術力が求められる元請けの仕事を受けていました。


でも、あまりに要求水準が高いことから、従業員からも不満が漏れます。


社長も「こんなに厳しく口を出されるのはたまらない」とその取引をやめてしまいました。


そして、大量生産・低価格の商品を扱う企業との取引へとシフトしたのです。


従業員も楽になりました。


でもだんだん利益が薄い仕事しかもらえなくなってしまいました。


そして、不景気になるとその注文も減ってしまったそうです。


こうなってから「どうしたら売上が上がるだろう?」と悩んでいます。



私はこの2つの会社をほぼ同時に見る機会に恵まれたことで、

「お客様の要望に応えることこそ、企業の成長になり、競争力をつける源なんだ」

と強く感じました。


ダイナミック・ケイパビリティとは


経営学では、変化に対応しながら自社の能力を作り替えていく力を「ダイナミック・ケイパビリティ(動的能力)」と呼びます。


ダイナミック・ケイパビリティは、

  • 変化の兆しを感じ取る力
  • 機会をつかみ取る力
  • 自社の資源や仕組みを変えていく力

の3つの視点で捉えられます。


市場の変化や顧客の要望を「感知」し、それを自社の機会として「捉え」、さらに組織や仕組みを「変革」していく力が、ダイナミック・ケイパビリティです。


A社は、顧客からの難しい要求を「感知」し、変化のきっかけとして「捉え」、工程や技術を磨き続けて「変革」してきました。


その積み重ねが、他社にはできない対応力となり、結果として差別化につながっているのです。


一方で、挑戦を避けたB社は、能力が固定され、やがて競争の中で埋もれてしまう結果に。


要望やクレーム、意見、お客様からはいろんな声があります。


それに真摯に向き合うことは、お客様のためであること以上に、自分の会社のためなんだなあと感じます。


ダイナミック・ケイパビリティの注意点


でも、資源が少ない中小企業で、何が何でもすべての要求に応えればよいわけではないですよね。


そのために社員が疲弊してしまったり、採算が合わなかったりしたら、かえって逆効果です。



見極める鍵は

「会社や社員が成長するかどうか」

ではないかと思います。


「どの仕事をつかみ、どの仕事を捨てるか」

それが正しいかどうかは、変革を主導する経営者の決断に大きく依存します。


今回のことで、

目先の楽さではなく、将来の成長につながる選択ができるかどうか。


それが、企業の未来を分けるのだと強く感じました。