私はそのとき読んでいる本の引用や参考文献なんかをきっかけに次の本を選ぶことがあります。


気に入った作家の本を続けて読んだりもします。


すると、外れもないし、前に読んだ本がより理解しやすくなったりします。


でも、そうやって選んでいると、どんどん似たような分野や視点の本ばかりに偏ってしまうということにもなります。


「偶然出会う本」っていうのが無い。


近頃では、日常生活でもそうですよね。


SNSで自分と似たような興味や価値観を持った人たちとつながっていれば、自分で知りたい情報も手に入るし、対立もなく、傷つくこともない、快適な環境です。


でも、これってどうなんでしょう?


これじゃあ自分の声が反響している音しか聞こえてないのと同じ?


自分とは違う考え方・立場の人たちとは、話さなくてもいいんですかねえ?



エコーチェンバーとは?


「エコーチェンバー(Echo Chamber)」は直訳すると「反響室」。


自分の声がこだまする空間です。


よく、音楽業界の人たちが使う音響施設です。


そこから、

自分の意見や考えに共感する情報だけが反響するように繰り返され、異なる意見が届かなくなる状態を表す時にも使われるようになりました。


ビッグデータから分析されて、スマホには自分の好みに合った情報ばかりが表示されます。


ChatGptはいつも自分の味方です。


現代の情報社会では、誰もがこの“心地よい部屋”で暮らしてしまっているかも。


エコーチェンバーのリスク


このエコーチェンバーの中で暮らしていると、本当の社会がわからなくなるかもしれません。


例えば、何かで交通事故のことを調べると、「交通事故」に関する記事ばかりを表示してきます。



すると「最近、交通事故のニュースを目にすることが多い…交通事故が増えているんだ」という感覚になりますよね。


でも、実際の警察庁などの統計データを見ると、交通事故件数や死亡者数は年々減っています。


「目にする情報の量」=「実際の発生頻度」ではないし、実際の重要度でもないのです。


 SNSで「自分と違う意見」を見かけると、ついミュートやブロックしてしまう。



ニュースも「自分が共感できるチャンネル」ばかりを見る。


エコーチェンバーで暮らすと、実際の世界で同じ現実を共有している人でも、「別の世界」に生きているような状態になっていってしまいます。


ある人が「今は、みんなが○○に興味があるんだな」と感じている同じ時に、隣の人は「世の中の人は、みんな△△に夢中だな」と感じているのです。



ここから、「分断」が進んでいるとも言われます。


経営者のエコーチェンバー


そして経営者は、SNSとは関係なく、エコーチェンバーで暮らす危険をはらんでいます。


自分に従う人、賛同してくれる人を周囲に集めがち。



無意識のうちに、反対意見を遠ざけてしまう。


もともと、「社長」って、従業員から見たら、異を唱えたくない存在ですよね。


何か言われたらめんどくさいし、人事にも関わります。


だから、よほど「何でも聴くよ」という態度を示してないと、どんどんエコーチェンバーに入ってしまいます。


そうしているうちに、会社を良くしようと貢献している人がどんどん排除され、昔からのやり方に固執した人達だけが会社に残ってしまうかも。


エコーチェンバーから抜け出すには


では、どうすればこの「心地よすぎる部屋」から抜け出すことができるのでしょうか。


たとえば…


  • あえて違うジャンルや視点の本を読んでみる。
  • 社外の人と意見交換をする機会を増やしてみる
  • 会議で“反対意見を歓迎する”ルールを作ってみる
  • 立場の異なる社員や顧客の声に耳を傾けてみる



ちょっと”いらっ”としたり、居心地が悪くなるかもしれません。


でも、その「異質の感覚」こそが、視野を広げ、経営判断のヒントになります。


エコーチェンバーから抜け出すと、沢山の偶然の出会いが世界を広げてくれるかもしれません。