映画「マイ・インターン」から学ぶ経営 ~会社のシニアはこうあるべき?~
3月8日土曜日は国際女性デーでした。
この日にちなんで開催された「ホワイトリボンラン」というチャリティマラソンで走ったあと、帰宅して録画しておいたビデオを観ました。
2015年に上映された『マイ・インターン』という映画です。
『マイ・インターン』とは
ロバート・デ・ニーロ演じる70歳のベンが、ZOZOTOWNのようなファッション通販サイトの会社の、シニアインターンに応募するところから物語は始まります。
シニア世代の私にとって、とても勇気をもらえる映画でしたが、経営のヒントにもなるのではないかと思い、その視点から考えてみました。
急成長企業が陥りがちな危機
アン・ハサウェイ演じる若き女性社長ジュールズが運営する会社は、彼女が自宅のキッチンで思いついたアイデアがヒットし、あっという間に社員200人を抱える企業へと急成長しました。
社内は自由でフラットな雰囲気で、若い社員たちは売上の達成を喜び合う活気のある職場。
でもそこには、急成長企業特有の「成長の歪み」も生じていました。
- 会社の成長スピードに社員が追いつけない
- 社長がすべてを背負い込み、一人で頑張るしかなくなる
- 社内の意思疎通がとれなくなり、組織が崩れ始める
こうした「歪み」は、日本のベンチャー企業でもよく見られる現象かも。
ここに貢献するのが、シニアインターンのベンです。
多様性が企業の成長を支える
ジュールズは最初、「70歳の年寄りに任せる仕事はない」と決めつけます。
彼女にとって、会社に必要なのは「柔軟性」と「革新性」。
年配の人にはそれは望めません。
確かに、若い人の視点は重要。
でも、それだけでは経営者の負担が膨らんでいき、組織にも不満が生まれます。
ベンは、「人間関係の築き方」「危機対応力」といった経験を活かし、会社の問題を次々と解決していきます。
同世代の単一的な価値観とは違う視点を持つ人がいることで、新しい風が吹きます。
日本でも、高齢者が言うことは、すべて「昭和」の一言で片づけられがちです。
でも、そこには時代が流れても変わることの無い、人間としての本質が隠れているかもしれません。
「正しいことは迷わずにやる」
映画の中で、ベンが好きな言葉として紹介されているのが、
「正しいことは迷わずにやる」(You're never wrong to do the right thing.)
ベンは、自分が信じる倫理観を大切にし、常に誠実に行動します。
- 短期的な利益より、長期的に「正しい選択」をすることの大切さ
- 大切なことはメールでなく、言葉で直接伝えるべきときがある
- きちんとした格好をする必要がある場面もある
映画の中では、ベンが若い社員の悩みに寄り添い、誠実な行動が問題解決につながることを示す場面が多く登場します。
シニアのあるべき姿
若い人がシニアを相手にしたがらない理由は、
- 指示をしたがる
- 昔の成功体験を押し付ける
というようなことにあります。
会社の中で自分の居場所を確保するために、自分を主張したくなりますよね。
しかし、ベンは決して「俺の時代はこうだった」とは言いません。
「社員がどうしたら幸せになれるか、その役に立ちたい」
という気持ちで行動することで、自然に彼の居場所が生まれます。
彼は、ジュールズに経営の指示をするのではなく、尊敬し、寄り添い、支え、励ます存在として関わります。
自分のスタイルを貫き、謙虚に、自信をもって接するベンに、みんなが相談にやってきます。
シニアが「過去の人材」として扱われるのではなく、会社の成長を支える存在になるためには、シニア自身が、誠実さ、信頼、倫理観を持つことが大切なんだと教えてくれます。
まとめ
映画の内容を「経営」の視点から考えると、次の3つのポイントが浮かび上がります。
急成長企業は、成長の歪みに注意する
ベンチャー企業は、フラットな関係を重視しがちだが、急成長による組織的な問題が発生しやすく、経営者が「すべてを自分で背負い込む」ことにつながる。
多様性こそが企業の成長を支える
単一的な価値観だけでは、見えない課題が出てくる。
若い人たちの柔軟性と革新性だけでなく、シニアの安定感と経験値も組織には必要。
世代を超えた多様性が、新しい解決策を生み出す。
シニアの役割は「支え、寄り添うこと」
会社の中のシニアは、自分を主張して居場所を見つけるのではなく、相手を励まし、支えるメンターとして存在するべき。
映画の中で、ベンはジュールズにこう伝えます。
「君は自分の人生のドライバーだ。ほかのやつらにハンドルを握らせるな。」
("You're the driver of your own life. Don't let anyone else take the wheel.")
一度車に乗ったら、進む方向を決めるのも、運転するのも自分です。
経営も同じ。
最終的に、どの道を進むかは経営者自身が決めるしかないのです。
『マイ・インターン』は、単なるコメディ映画ではなく、企業経営や組織運営の本質を考えさせてくれる素敵な作品でした。