パソコンを購入。もう買ってしまったのに、ついつい「〇〇電機」のチラシを見てしまう、なんてことはありませんか?

これは、パソコンが欲しいんじゃなく、自分の選択が間違っていなかったことを確認したい心理からくるようです。

認知的不協和とは

この状況、心理学用語で、「認知的不協和」という名前がついています。

例えば、株で損をしてしまったとき、「人生勉強の授業料だ」と、考えたりします。

お金を増やそうとして株に手を出した。でもお金を損してしまった。そんな矛盾に耐えられないので、自分の行動を正当化する理由をつけて、自分を落ち着かせるのです。

「自分はお金を増やそうとしたわけじゃない→株で失敗した人の話はよく耳にする。→自分もそれが経験できた。→人生勉強をしたんだ」というように。

認知的不協和を解消する行動パターン

このような認知的不協和を解消するために、人がとる行動には3つのパターンがあります。

タバコを吸っている人を例にとると

A:「タバコは体に悪い」という情報があるのもよく知っている。

B:自分はタバコを吸ってしまう。

この2つは、矛盾した状態にあります。この矛盾を抱えることに耐えられず、人は

  1.  禁煙する 
  2. 「タバコを吸っていても長生きしている人がいる」と考える
  3. タバコを吸わないストレスのほうが体に悪いと考える 

というような行動をとります。

1.は、自分の行動B「自分はタバコを吸ってしまう。」を「タバコは体に悪い」という情報に合わせることで、矛盾を解消

2.は、Aの「タバコは体に悪い」という情報を否定して、自分の行動を正当化

3.は、新たにC:「タバコを吸わないストレスは体に悪い」という情報を加え、自分はそっちの情報に合致した行動をとっていると考え、自分の行動を正当化

というわけです。


消費者行動としての認知的不協和

こうした人間の行動は、商品を買ったときにも起こります。

例えば、自分が買ったパソコンが、期待以上に使いやすければ満足しますが、期待に添わなければ不満足を感じます。

高いお金を支払うと、「こんなにお金を出したんだから、満足できるものであるはずだ」と、勝手に期待が高まります。そうなると、ちゃんと値段相応の品質のものでも、人は不満を感じます。

高い商品で、悩んだ末に買ったものでは、この傾向はより一層高まりますが、どんな商品でも、何かしらの不満は感じてしまいます。

そしてこの不満足(不協和)を減少させるような行動をとるのです。

タバコの例で説明したように、

1.自分の行動を変える→買い替える、または、その商品を使いこなせるように努力する。

2.現実の情報を否定する→購入した商品の欠点を発見してしまった場合には、購入した商品の広告を積極的にみて、「こんな素晴らしい機能がついている」と長所を発見するよう努める。

3.新しい情報を加えて、自分の行動を正当化する→「自分が買ったパソコンは5年保証だけど、△△社のパソコンは1年保証。やっぱり〇〇社のパソコンを買ってよかった。」など、他の商品の欠点を発見するように努める。

というような行動パターンがあります。

認知的不協和で顧客満足度を高める方法

ですから、お客様に商品やサービスを提供した時には、この認知的不協和を解消するサービスを導入すると、商品の満足感を高めることができます。

例えば

1.自分の商品やサービスについての短所と長所を明確にする。

「この扇風機、360度回転して、風量も5段階に調節できるんですが、音がうるさいんですよ。」というよにうに、最初からお客様に短所も長所も伝えておけば、「音がうるさい!」という不満も「店員がそう言ってたな。」というように、購入後の不満を少なくすることができます。

2.満足感の高い人の口コミをあげておく。

商品に不満を感じて商品のサイトをチェックした時に、星がたくさんついて高評価だったり、「部屋中涼しくて、買ってよかったです!」のような口コミが多数あったり、商品が「品切れ」になっていたりすると「やっぱり自分はいい買い物をしたんだ」という納得感につながります。

3.アフターサービスを充実させる。

「お買い上げありがとうございました。商品の使い心地はいかがですか?何かあればいつでもご相談ください。」などと書かれたハガキが送られると、自分が感じる不満を解消してくれるものがあるという安心感が生まれます。ほかにも、短期間は返品に応じる、修理ができる、保証期間が長いなど、買った後も面倒見てくれるサービスというのは、それがあるだけで顧客満足度につながります。

以上のことは、買ってしまったことを満足してもらい、次につなげるための方法です。

まとめると、

1.欠点を最初に伝え、買った後の不満足を軽減する。

2.チラシ、サイトにほかの人も買って満足していることがわかるような広告や口コミを載せるなど、購買者があとで確認したときに認知的不協和を解消できる工夫をする。

3.アフターサービスを充実させ、安心感を提供する。

ということになります。

認知的不協和を解消する商品開発

商品を買ってもらうために、認知的不協和を使うこともできます。

「痩せたいけど甘いものが好き」「英語を話したいけど、勉強する時間がない」など自分の欲求と、現実の間に矛盾が生じてもやもやしている人は、世の中にたくさんいます。

この人たちのために、「食べても太らないスイーツ」「すきま時間を利用してできる英会話教材」のような商品が考えられます。

「電化製品は欲しいけど、操作が難しそう、説明書を読むのが苦手」のような人に対して、「よろしければ設置しますよ。」「使い方を学べるイベントをやります。」などのサービスも、ありがたいです。

このように、「人間は認知的不協和を解消したい生き物」という視点に立てば、様々な商品やサービスのアイディアが生まれ、顧客満足度につながります。