昨日は、能代の会社の方たちとの新年会に誘われて、八峰町の民宿に一泊しました。



民宿の女将は県外からこちらに移ってきた方なので、秋田での近所づきあいにいろいろ戸惑うことがあると言います。


その一つが挨拶。


「おはようございます」とか、「こんばんは」とかの挨拶が無く、いきなり本題から入るので戸惑うというのです。


あいさつは「ご飯食べた?」


私が小さい時、「おはようございます」とか「こんにちは」と挨拶する近所の人はいませんでした。


挨拶は「ままくったが?(ご飯食べた?)」の一択。


学校帰りでもこれを言われ、「いつのご飯のことを言っているんだ?」と返事に窮していた思い出があります。



でも、大人になってタイで暮らした時、やはり挨拶は

「กินข้าวรึยัง キン・カーォ・ルヤン?(ご飯食べた?)」

でした。


大人になってから異国で聞くと、すごく暖かい、いい言葉だったんだなと思いました。


その話を女将にすると、妙に納得してもらえました。


多分、近所の人は

  • 地域の外の人には、「おはようございます。」
  • 地域の中の人には「ご飯食べた?」

など、あいさつを使い分けていたのではないかと思います。


「おはよう」などの挨拶が無いのは、地域の仲間として認められている証拠。


「他人」と「地域の人」の間には格段の開きがあったのだと思います。


何が言いたいのかというと、「防災」についてです。


BCPとは


昨年12月から今年の1月にかけて、沢山の企業のBCP策定をお手伝いさせていただきました。


BCPというのは、「事業継続計画」のことです。


何もなければ、事業は継続していきます。


でも、想定外のことは起こります。



  • 電気・ガス・水道・ネットが使えない。
  • 頼りの従業員が出社できない。
  • 会社の倉庫が浸水して機械が使えない。


いろんなことを想定して、なるべく早く仕事ができる状態に戻れるようにする計画が、BCPです。


ヒト・モノ・カネ・情報のカテゴリーに分けて、会社の継続力を守るための計画を立てます。


BCPと近所づきあい


企業の方から、今まで経験した災害の時のお話を聴くと、

  • 近所の人から車の移動を手伝ってもらった。
  • いつも行っているガソリンスタンドからガソリンを融通してもらうことができた。
  • 銀行さんと懇意にしているから、スムーズに融資してもらえた。

など、日ごろの付き合いに救われた例が沢山飛び出しました。


これを考えると、

  • セルフのガソリンスタンドばかり使っている。
  • ネットバンクしか使ってない。
  • ネット保険を使っている。

という私のような人は、いざという時に孤立してしまうかも、と思いました。


そう言えば前職で在外事務所の所長からは

「近所の人と仲良くしなさい」

と教えられたものです。


もちろん仕事の面でも、絶対にその方がいいのですが、災害があった時などは地域の方が頼りです。


言葉の壁がある私たち日本人にとって、情報を持っているのも、協力してくれるのも、すべて現地の人。


よそ者の私たちは、日ごろの付き合いが無ければ、いざという時に情報を得たり協力してもらったりすることは困難です。


私も、現地の人に数えきれないほど、助けてもらいました。


団地の事例が教えてくれる近所づきあいの大切さ


学生の時に、実際の団地の事例を学んだことがありました。


記憶があいまいですが、こんな話です。


団地の排水管の一部が故障して水が漏れだした時のことです。




西の棟では


西側の棟は、隣の人の顔も知らない人達ばかりで構成されています。


西の棟では、不具合に気が付いた住民が団地の責任者に連絡しましたが、ご近所にはお知らせしませんでした。


だから、不具合に気が付かない人たちはトイレを使い続けていました。


それで、西の棟全体の下水が溢れ、下の部屋の天井から上の下水が流れてくるほどの大惨事に。


数か月に及ぶ大規模な修繕作業が必要になりました。


東の棟では


一方、東の棟は、ある県からの労働者が多く住む社宅として使われていました。


いつも声がけをしていて、何でも話せる関係ができています。


排水の不具合に気が付いた住民は、団地の責任者や懇意にしている業者に連絡するとともに、東の棟に住む人全員で、原因がわかるまで水道やトイレを使わないようにしました。


東の棟では、被害は最小限に抑えられ、その日のうちにトイレは使えるようになり、日常生活に支障はありませんでした。


近所に声かけをするかしないかだけの違いなのに、結果的にはすごい違いだったのです。


互近助の力


阪神大震災の時、建物が崩壊して下敷きになった人が多数出ましたが、77%の人は、家族や近所の人に救出されています。


消防隊や自衛隊などに救出されたのは23%。



ご近所の力が、命を救います。


今回、BCP策定のお手伝いをしたとき、ある土木会社の社長が、

「BCPを策定する一番の目的は、災害が起こった時に、一刻も早く地域の住民を守るため」

とおっしゃっていました。


この社長は、去年の大雨の時も、自分たちが所有する重機を集め、住宅の前の道路に溜まった泥などを無償で除去して回ったそうです。



こういう会社が、地域を守るんですね!


東北大震災以降、発災時にご近所同士が助け合う「互近助(ごきんじょ)」という言葉ができているそうです。


近頃は近所づきあいが希薄になっていますが、日ごろの声かけやちょっとした助け合いが、いざという時に被害を少なくするかもしれません。