「こんな大企業が、いまだにそんなことしてたの?」的なニュースってありますよね。



そういう組織は、

「偉い人にたてつく人がいない組織」

なんだろうなと思ってしまいます。


日本人は、「和」を大切にするので、誰かの意見に難癖をつけることを良しとしません。


逆に、異を唱えることを仕組みとして持っていたのが、カトリック教会です。


悪魔の代弁者とは


カトリック教会では、その人が聖人としてふさわしいかどうかを決める時に、

「悪魔の代弁者」という役割の人がいたそうです。



悪魔の代弁者は、

「その人はこんな欠点あるんじゃない?」

「本当にその人でいいの?」

みたいな疑問をあえて投げかけるわけです。


その壁を乗り越えられてはじめて、誰から見ても真の聖人となるんですね。


なるほど、

  1. ただ一人の権力者に「あなたを聖人と認めます。」と言われた人
  2. いろいろ反論をもろともせずに、「やっぱり聖人ですね」と認められた人

の2つがあれば、2の方が信用できますよね。


つまり、「悪魔の代弁者」は、本当に難癖をつけているわけではなく、仕事として、「その人が聖人だ」ということを、論理的に証明するためにその役割を担っているのです。


刑事が、まず全員を人を疑ってかかる。


その疑いが解消されれば、容疑者リストから取り除く。


みたいな作業と似ています。



「悪魔の代弁者」という宗教の中の作業は、社会的な意思決定のプロセスとしても重要視されてきました。


「まずは議論の俎上に上げる」

というのが、物事の決定のプロセスの一つなわけです。


キューバ危機のケネディ大統領


ジョン・F・ケネディが大統領だった時のことです。


当時のソ連(ロシア)がキューバに核ミサイル基地を建設中だという情報が入りました。



信頼できる筋からの情報です。


核戦争に発展しかねないこの状況。


すぐに先制攻撃するしか手はないと思われていました。


が、

ケネディは、時間のない中、様々な立場の人に議論させたそうです。


自分自身はその議論に参加せずに。


大統領の自分が議論の中に入れば、自由な話し合いができなくなるだろうと思ったようです。


そして、最も信頼できる2人を呼んで「悪魔の代弁者」の役割を命じました。


一つではなく、複数の案を提示することも命じました。


12日間、参加者全員が、平等な立場で自由に話し合いが行われたそうです。


徹夜で話し合いが続いた結果、


アメリカの「先制攻撃」と「海上封鎖」の2つの意見が提示されました。


最終的にケネディが決定したのは、「海上封鎖」。


アメリカの海軍がキューバのまわりの海に船を並べ、キューバへ武器を運ぶ船が来ないかを見張りました。


ソ連のフルシチョフ第一書記とも交渉し、最終的にソ連がミサイルを撤去したのです。


これは、歴史に残る「キューバ危機」での話です。


悪魔の代弁者のおかげで、アメリカとキューバ(ロシア)との武力衝突は避けられました。


良い経営者とは


これでいうと、いい経営者は、


「素晴らしい意見を言える人」


ではなく


「様々な意見を聴こうとする人」


かもしれません。


宗教観は違うかもしれませんが、日本人も批判的な意見があった時に

「おっ!悪魔の代弁者登場!決断の質を上げるチャンス!」

と、とらえられるといいですよね。