先日、駒ケ岳で木道整備のボランティアを行いました。


駒ヶ岳の頂上には阿弥陀池という池があり、この水が氾濫した時に木道が流されてしまいました。


それを元の場所に移動するというものです。



最初は6人で運ぶ予定だったのですが、水を吸った木道は重くて、10人で運びました。


加わった4人は、元気な高校の登山部の男子たち。


そうなると、明らかに私は6人の時よりも力を抜いていた気がします。


一人の力を10として、10人いたら100の力が出そうなものなのに。


そんなことにはならないのです。


リンゲルマン効果とは


人が多くなると、人は力を抜いてしまう。



フランスの農学者、リンゲルマンさんは、グループの規模とプロジェクトに対する個人の貢献度が反比例すると言っています。


  • 教室で、答えがわかっていても、大勢のクラスメイトの中だと、手を上げるのが躊躇される。
  • 綱引きをするときに大勢いると、力を抜いてしまう。
  • 困っていそうな人がいても、「こんなに大勢いるんだから誰かが助けてくれるだろう」と思ってしまう。

というようなことってありますよね?


グループになると一人一人の力が100%発揮されない。


リンゲルマンさんによると、これには二つの理由が考えられるそうです。


モチベーションの低下


一つはモチベーションの低下です。


一人の時は

「自分にはこれをやり遂げる責任がある。私しかいない。」

と思っていたのに、大勢になると

「誰かがやってくれるだろう。私がいなくても大丈夫。」

となってしまうというのです。


他人との協調


もう一つは、他人との協調です。


ムカデ競争で、一人だけ早く走ってしまったらみんなが転んでしまいます。



歩調を合わせるためには、それぞれが手加減し、丁度いいステップでゴールします。


これは、集団による「同調行動」と呼ばれるものです。


周囲の意見や行動に合わせて自らの動向を決める状態です。


ムカデ競争で、速い人に合わせるのではなく、遅い人に合わせようとしてしまう。


ともそも、ムカデ競争でもないし、周囲の人に合わせる必要もないのに、合わせる行動をとってしまう。


集団としてのモチベーションが低下している状況だと、個人的に高い意欲を持っていた人でも、徐々に周囲にあわせた行動をとってしまうようです。


会社は、リンゲルマン効果の温床?


会社という場所は、チームでやらなければいけない場面が沢山あります。


みんなでやったほうが効率がいい、と信じていますが、実は効率が悪くなっている?


大問題ですね。


対策は?


個人的な役割を明確にする


でも待てよ。


チームでプレイするサッカーなどでは、一人一人が最高のパフォーマンスをしているように見えます。



さらに、一人よりもチームの方が自分の力を100%以上に出せているような感じです。


これは、どういうこと?


単に

「みんなで木道を運ぶ」

となると、ちょっと力が抜けてしまいますが、もし

「あなたは○○の力があるから、先頭の右側があなたのポジションです。」

などと役割を与えられたらどうでしょう?


「私がいなくても大丈夫」とはなりませんよね。


少数精鋭にする


  • 人が多くなればなるほど、人は力を抜いてしまう。
  • さぼっている人がいると、自分もさぼっていいんだと思ってしまう。

こんな状況を防止するには、人数を絞ることも大事。


みんなで木道を運んで、みんなで動かないように柵を作り、みんなでかすがいで止める。

というよりは、

  • 運ぶのにふさわしい人達のグループ
  • 柵を作る人たちのグループ
  • かすがいで止める人たちのグループ

などと少数精鋭のグループに分けて作業を行うことで、「力を抜く」ことが防止できます。


1on1ミーティングを実施する


コミュニケーションが不足すると、そのチームへの帰属意識が薄れ、仲間意識も薄れ、リンゲルマン効果が大きくなります。


個人の意見を聴く機会を設けることで、個人のチームへの帰属意識が高まります。


まとめ


大人数で作業する時は、リンゲルマン効果が働いてしまい、一人一人のパフォーマンスが低下する可能性があります。


でも、スポーツのように、一人一人が得意なところで役割を持ち、それが評価されるという状況では、100%以上の力が発揮されます。


会社でも、チームが高いパフォーマンスを発揮してもらうためには、

それぞれの個人の特性に目を向けて、コミュニケーションを取り、個人の力を発揮してもらえる集団を作ることが大事です。