「日本は労働力が足りない」と言われています。


それなのに!


もっと働きたくても、働くと損するために働く時間をセーブしている人たちがいます。


それは誰かというと、サラリーマンに扶養されている配偶者の人たちです。



サラリーマンの扶養となっている配偶者は、社会保険料を支払わなくても将来国民年金がもらえます。健康保険料もタダ。


自営業の人の配偶者は、家族と一緒に国民健康保険に入り、自分で年金を支払って将来に備えなければなりません。



でも、サラリーマンの配偶者は、無料。


サラリーマンに扶養されている配偶者の健康保険や年金は、誰が支払っているの?

と思いますよね。


扶養している人も独身の人と同じように、自分のお給料の9%しか支払っていません。


つまり、扶養されている配偶者の人たちの分は、日本国民全体で支払っているのです。


すごい特権ですよね!


ですが、この人たちが働きに出かけ、年収がある一線を超えると、その特権階級から抜けなければなりません。


その一線は、その人がパートやアルバイトをしている会社の規模で違います。


従業員が100人を超えるの会社だと、106万円、それ以下だと130万円。


いままで年収129万円だった人が、1万円分多く働いただけで、年間30万円以上の社会保険料(健康保険料と国民年金)を支払わなければならないのです。



働くだけ損します。


だから、その一線を超えないように、働く時間をセーブしています。


これが、「年金の壁」と言われるものです。


でも、このままだとせっかくの労働人口がもったいないし、国民年金だってもったいない。


というわけで、この特権階級の人のことはいろいろ議論されてきたわけですが、10月20日から新しい制度ができました。


その名も

「年金の壁・支援強化パッケージ」

https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html

です。


年金の壁・支援強化パッケージ


パッケージには、2つの制度があります。


社会保険に入った時の助成金制度


長く働いたり、賃金がアップしたりして扶養家族ではなくなり、社会保険に加入しなければならなくなった時でも、損をすることの無いよう、その分を助成するのが、

「キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)」です。


一時的に賃金がアップしても、扶養からはずれない制度


「会社が忙しい時期には、ちょっとでも多く働いてもらいたい」

と思うのが、会社の本音ですよね。


働いている人も、「みんな忙しくしているのに、年収の壁があるから早く帰らないと」というのはつらい。


そんなとき、「これは一時的なものです」という書類を書けば、扶養家族でいられる制度もできました。


「一時的って、どれぐらい?」と思いますよね。


最大2年間、一時的とみなしてもらえるらしいです。


これからどうなる?


社会保険料を支払った分を助成してくれる制度も、一時的な賃金アップなら扶養家族でいられる制度も、未来永劫続くわけではありません。



労働者も確保したいし、年金も足りなくなりそうだと考えている政府は、

「この特権は時代と逆行しているから廃止したい」

と思っているかもしれません。


今回の「年金の壁対応」は、

年金の壁など気にせず、働きたい人にがっつり働いてもらい、社会保険料を支払ってもらいたい

という国の「一時的な経過措置」だと考えることができます。


その証拠に、

従業員100人を超える会社で仕事をしている主婦(夫)は、年収106万円を超えると自分で社会保険料を支払わなければならない

という制度は2023年度まで。


2024年度からは、従業員が50人を超える会社で働いている人がこの対象になります。


「年収130万円までは扶養でいられる」という人は、どんどん少なくなっているのです。


経営者も、そのことを見据えて従業員対応を検討していきましょう。