「従業員に何度も注意しているんだけど、問題が解消しない」なんていうことはありませんか?

原因は、不注意からきているわけではありません。

じゃあ、なにから?

そんな時に使えるのが、「特性要因図」です。




特性要因図とは

「特性要因図」というのは、品質管理の問題の原因究明をするときに使われる代表的な手法のひとつです。

最初に解決したい問題を置いて、その要因を「なぜ?」「なぜ?」「なぜ?」と問いかけながら最終的な本当の原因にたどり着けるという便利な方法です。

単に、「いつも遅刻する」→「なぜ?」→「朝起きれない」→「なぜ?」→「目覚ましが聞こえなかった」→「なぜ?」→「熟睡してるから」→「なぜ?」→「前の晩に遅くまで起きているから」→「なぜ?」→「スマホで動画観てるから」というように、一つの問題を深堀りして本当の原因をつきとめるのは、「なぜなぜ分析」と言って、世界のトヨタが推奨する原因究明の方法です。

これも、もちろん素晴らしい手法ですが、「特性要因図」は、考えられる大まかな原因を4つから6つぐらい置いて、そこから深堀するので抜けもれがありません

では、作り方をご説明します。

特性要因図の作り方

今回は「異物混入のクレームが慢性的に発生しているカット野菜の工場」を例として、特性要因図を作ってみます。


背骨を描く

まず最初に、大きな模造紙を用意します。

理想的には、工場で働く全員、もしくは工程ごとの責任者が、それぞれマジックを持って、模造紙を囲みます。

そして、下の図のように、真ん中に大きな矢印を書き、その先に今回原因を解明したい問題を「特性」として設定します。

特性要因図は「フィッシュボーンチャート」とも呼ばれていて、作っていくと魚の骨のようになります。

最初に引いた真ん中の矢印は、背骨となります。

 



大骨を描く

次に、大骨を作ります。大骨として書き加えるのは、すぐに思いつく要因です。

大骨は、4Mをベースに考えます。

Mというのは、Man()Machine(機械・設備)Method(方法)Material(材料)4つを指します。

この4つをベースに、問題を取り巻くものは何かを考えながら書き出すと、思いつきやすくなります。

ここでは、野菜が運ばれてきてカットされてパック詰めされるまでの流れや場所を考えて「環境」「測定・検査」「方法」「人」「機械」「材料」を置いてみました。

この「大骨」があるおかげで、問題に関係するだろうと思われる原因を全部カバーすることができます。

今回、製造業の工場を例にとったので4Mをベースにしていますが、ほかの業種の場合は、
問題に関係ありそうな要因を4つから6つぐらい設定して大骨にします。


小骨を描く

次に、それぞれの大骨が原因だとして、そこで、どうして異物が混入するのか、考えられるものを「小骨」として書き加えていきます。

例えば「人」が異物混入にかかわっているとしたら、技術不足や、服装などが考えられます。

「方法」だったら、野菜を洗って、切って袋に入れるまでの方法のどこかに原因があるかもしれない。

というような感じで考えられるものを全部書いていきます。

下の図では、「環境」という大骨に「レイアウト」「照明」「清掃」という小骨を書き加えました。同じように、「人」「機械」「材料」「方法」「測定・検査」の大骨にも、考えられる小骨を書き加えていきます。

 

孫骨を描く

次に、小骨の原因をもっと細かく見て考えられるものを孫骨として書き加えます。

「レイアウト」だったら、換気扇とドアの関係がどうなのか、「清掃」だったら、掃除する場所の順番は関係ないのかなど、考えることがありそうです。

今回は、「照明」に孫骨として「暗い」を書きました。このように、考えられるものを次々と書き加えていきます。孫骨の先にも要因があれば、「もう見つからない」と考えられるところまで深堀します。


 

こうやって、それぞれの担当者が、自分のところで思いつく原因を考えていくことで、一人では見えなかった原因があぶりだされ、従業員全員で共有できます。原因として浮かび上がった小さなものを、一つ一つ解決していくことで、カット野菜の異物混入問題が解決できるというわけです。

「小骨だと思ってたけど孫骨だった」というような時もあります。

模造紙に直接描かずに、まずは全員がポストイットなどに書いて話し合いながら張り付けていくと、悩まずに思いついたことを集めることができます。

進め方のコツ

この特性要因図成功のコツは

  • 勤務時間内に行う
  • 社長が音頭を取って行う
  • 関係者全員が5~6人のチームになる、それが無理であれば各工程のリーダーを集めてグループで作る
  • 模造紙を用意し、参加者全員がマジックをもって骨を書き加えていく

ことです。

「社長が音頭を取って勤務時間内に行う」ことができなければ、誰も進めることはできません。

機械が動いている製造現場で、このような時間を取るのは大変なことですが、そのまま製造を続けていると、この会社のクレームはなくなりません。

クレームが出たら、下のような膨大なコストがかかります。

  • 異物が何かを検査機関に出して調べてもらう
  • 報告書を提出する
  • 陳謝する
  • 怒られる
  • 返品や値引き

費用も労力もかかって、モチベーションも下がります。

「特性要因図」をみんなで作ることで、連帯感も責任感も生まれます。品質管理に対する一人ひとりの意識も高まります。

模造紙1枚、マジック数本と数時間で会社が変わります。

今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。