一見健康そうに見える人も、実は血圧が高かったり内臓脂肪が多めだったりします。

これと同じで、「資産家」として知られている人が、実はその豪邸とか素晴らしい絵とかの「資産」が全部借金という「元手(もとで)」で作られてるかもしれません。

こうした「資産」と「元手」が一目でわかり、会社の状態を伝える役目を果たしているのが「貸借対照表」です。

今回は会社の健康診断書ともいえる「貸借対照表」を詳しく解説します。



「資産」と「元手」

会社は、お金をどこかから調達し、それを使って会社が持っている技術や人材を活用して商品やサービスを創ってお客様に提供して利益を得ます。 

ケーキ屋さんだったら、ケーキがどんどん売れてお店を増やしたり工場を作ったりすると会社の「資産」が増えていきます。逆に土地を売ったりすると「資産」が減ります。

貸借対照表では、左側には目に見える「資産」を、右側にはその資産がどこから持ってきたお金から成り立っているかの「元手」が書かれてあります。

「元手」には、借りたお金と自分のお金がありますが、借りたお金は「他人資本」、自分のお金は「自己資本」と言います。
他人資本を「負債」、自己資本を「純資産」または単に「資本」と呼ぶこともあります。
青色申告の貸借対照表では、左側を「資産の部」右側を「負債・資本の部」と呼びます。

そして、資産のほうは、「借方(かりかた)」、元手のほうは「貸方(かしかた)」といいます。覚え方としては、下の図のように、「かり」の「り」の字の先が左に向かっているから左が借方、「かし」の「し」の字がみぎに向かっているから右にあるのが貸方、と覚えます。



健康診断書は、健康診断を行ったその日の状態が書かれています。貸借対照表も同じで、決算を行ったその日の状態が書かれます。例えば、令和3年3月31日に決算を行えば、令和3年3月31日に、資産がどんな状態で元手がどんな状態なのかがわかります。

例として、トヨタの貸借対照表を見てみると、こんな感じです。


トヨタの貸借対照表(https://jp.reuters.com/investing/quotes/balanceSheet?symbol=7203.T

これをみると、トヨタが51.94兆円の資産を持っていて、それが、31.37兆円の「借りたお金」と、20.57兆円の「自分のお金」で成り立っているのがわかります。

トヨタは、株式会社なので、株主資本が、「自分のお金」となります。

貸借対照表の項目

実際の貸借対照表は、もっと細かい項目まで詳しく書かれたものになります。


項目は、次のように分けられています。



青色申告の貸借対照表は、下のようになっています。



自分で会社の簿記をやっている人は、この貸借対照表を完成させるために、日々の仕訳帳を書いているんだと思えば、「資産になるものが増えたら、右側(借方)に来て、借金やもうけが増えたら左側(貸方)に来る」と覚えることができます。

このように、「資産」がどんな「元手」を使ってできているかがわかるのが貸借対照表なので、「資産」側と「元手」側は、合計が一緒になります。右と左のバランスが取れているので、「バランスシート(Balance Sheet)」、「B/S(ビーエス)」と言われたりもします。

会社の健康状態をはかる数値

このB/Sでわかる会社の健康状態の数値の主なものを、3つあげました。

流動資産/流動負債×100

これは、「流動比率」と言って、短期安全性を示す数値です。
短期的な支払い義務に対して、十分に返済ができる手段があるかどうかがわかります。
200%以上が理想ですが、100%以上であれば1年以内の支払い能力が確保されているということになります。

固定資産/自己資本×100

これは「固定比率」と言って、長期安全性を示す数値です。
一年以上はそのまま持ち続けて使う資産が、返さなくてもいい自己資本によってどれぐらいカバーされているかを知ることができます。
値が小さいほど、安定的な設備投資がされていることを意味します。

自己資本/総資本(資本の合計額)×100

これは「自己資本比率」と言って、資本調達構造を示す数値です。
会社が調達してくる資金がどんな構造かを知ることができます。
会社の安全性だけ見ると、返さなくてもいいお金でやりくりできる会社は理想的など言えます。
一方で、負債があると税金を節約できるというメリットもあります。トヨタの例を見ても、自己資本比率は39.6%でした。借入金もうまく使いながらバランスの良い資金調達を行うことが大事です。

以上のように、貸借対照表は作って終わりではなく、会社の健康診断書として活用することができます。