10月1日から始まるインボイス制度


経理担当者の方は不安でいっぱいですよね。


そんな人がやらなければならない最初のことは、

自分の会社の消費税の計算方法を確認すること

です。


簡易課税と本則課税


年間売上が5千万円以下の事業者は、消費税の計算方法を2つから選択できます。


それは「簡易課税方式」と「本則課税方式」


本則課税とは


本則課税は、本来の消費税の計算の方法。


売り上げが5千万円を超えている事業者は、この本則課税しか選択できません。


本来は

① 自分の会社がお客様に商品を売った時に受け取った消費税

② 自分の会社が商品を買った時に支払った消費税

があるので、①から②を引いてその差額を消費税として納税します。




なので、

①の証拠としてに自分の会社が発行するインボイス

②の証拠として相手方が発行したインボイス

の2つが必要です。


株式会社Aは、いつもコピー用紙を購入しているB商店があったとします。


そこがインボイス登録事業者でなければ、インボイスを発行してもらうことができません。


つまり、コピー用紙を買う都度支払っている消費税を支払った証拠②がありません。


なので、仕入れ先の事業所がインボイスを発行できるのかどうか、確認する必要があります。


もし取引先がインボイス発行事業者ではない場合はどうするのかも決めておく必要が出てきます。

  • 今までどおり取引を続けるのか
  • 他の取引先を探すのか
  • 今の取引先と交渉して、消費税分安くしてもらうのか

などの選択肢があります。




簡易課税方式とは


簡易課税方式は、売上金額に一定の割合を掛けて仕入れ額とみなします。


売り上げた時に支払った消費税から、仕入れで支払ったとみなした消費税を引いて納税します。


一定の割合というのは、こちらです。

国税庁:簡易課税制度の事業区分参照


もし、飲食店を営んでいたら、第4種事業なので、売上の時にもらった消費税額の60%は、仕入れの時に出ていったとみなされます。


だから、残りの40%を納税すればいいということです。


ということは、何かを仕入れた時、もらった請求書はインボイスであろうがなかろうが、関係ありません。


自分の会社がお客様にサービスや商品を提供した時の売上高さえわかれば支払う消費税が計算できるのです。


つまり、本則課税で必要だった②の証拠が必要ないということです。


取引先に「インボイスの登録番号を教えてください」という必要もありません。


楽ちんですよね。


簡易課税のデメリット


「簡易課税のほうが簡単なのに、わざわざ本則課税を選ぶ人がいるの?」

と思いますよね。


実は本則課税のほうが得をするケースもあるのです。


もし会社が今年大きな設備投資をしたら、多額の消費税を払っている可能性があります。



売上で得られた消費税より、支払った消費税が多いかもしれません。


そうなると、本則課税できちんと計算すれば消費税が戻ってくるかもしれません。


簡易課税だと、売り上げをもとに消費税を計算するだけなので、いくら支払いが多くても消費税が戻ってくる可能性はゼロです。


大きな買い物でなくても、日常的に国が決めたみなし仕入れ率より大きな仕入れを行っていることもあります。


「うちのレストランが支払っている経費を考えると売り上げの60%じゃ足りないな」という場合は、きちんと計算する本則課税のほうがいいかもしれません。


どちらがいいか、ちゃんと検討したほうがよさそうです。


2割特例


ちなみに、

免税事業者なのに今回のインボイス制度を機にインボイス発行事業者、つまり課税事業者になられた方には、「2割特例」があります。


2割特例とは、


簡易課税方式を選んだ人もそうでない人も、令和8年9月30日までは、売り上げの時に受け取った税金の2割を税務署に収めるだけでいい


というものです。



これを選んでも選ばなくてもOKです。


税金を納める時までに決めれば良くて、特に届け出は必要ありません。


国税庁:2割特例参照


少額取引はインボイス不要?


また、一回の取引が税込み1万円未満だった時には、インボイスは必要ありません。


これは、年間の課税売上高が1億円以下の事業者や、前年度の半年間の売上高が5千万円以下の事業者が対象です。


税込み1万円未満だったら、その取引を帳簿に記載さえしていれば、消費税を支払ったことが認められるのです。




これは、インボイス制度が始まる令和5年10月1日から令和11年9月30日までに行われる仕入が対象です。

国税庁:少額特例参照


本則課税と簡易課税、自分の会社がどちらを選択しているのかを確認し、心の準備をしておきましょう。