ツバル事情 第2弾 ~大切な水~
前回、ツバルが気候変動で雨が降らない時期が続き海が汚れたという話を書きましたが、南の島で雨は本当に大切です。
水がない理由1 山がない
なぜなら、
このように、どこにも山も川も無いからです。
日本では、木が生い茂った山が沢山あって、雨を貯めてくれています。
そして、川を作って豊富に水を提供してくれます。
私が住んでいたツバルでは、雨を貯めるところは、雨水タンクしかないのです。
水がない理由2 淡水レンズがない
昔は、ツバルでも、井戸を掘ると真水が出てきたようです。
海面にも、表面には淡水レンズというのができていて、真水を提供してくれるのです。
でも、現在井戸を常時利用している人は誰もいません。
私たちのプロジェクトでも首都の全ての井戸の跡を調べさせてもらいましたが、わずかに残っている水は、海水でした。
ツバルの淡水レンズは、長年海を掘ったり砂を採ったりしているうちに、すでに壊れていたのです。
ラニャーニャ現象で雨が降らない
2011年、タイなどで洪水の被害がすごかった時、ツバルでは雨が9か月降らなくて国が非常事態宣言を出しました。
ラニャーニャ現象は、太平洋側の海水温が下がり、タイ側に大雨をもたらす一方で、太平洋には雨が降らない事態を引き起こします。
ツバルではタロイモと並んで大事な主食であるブレッドフルーツ(パンの実)も
こんな風に変わり果てた姿になりました。
じゃあ、水はどうするかというと、
水の供給源1 家の雨水タンク
まずは自分の家で日常的に使っている雨水タンクです。
各家家の雨水タンクは、10m×10mの部屋を高さ10mまで満たすぐらいの水を貯めておくことができます。
日本人みたいに毎日お風呂に入っていたら、それだけで1か月で無くなってしまう量です。
だから毎日、食器を洗う時も、洗濯するときも、極力少ない水で済ませています。
それでも3か月ぐらいで無くなってしまいます。
水の供給源2 公共の雨水タンク
9か月雨が降らないとき、殆どの家の雨水タンクは底をつきました。
全世帯が一日バケツ4個の配給制になりました。
集落にある教会の地下は雨水タンクになっていて、緊急事態の時はそれを配給することになっていたので、毎朝そこに並びました。
並びながら「早く雨が降るといいね」と口々に言っていたものです。
水の供給源3 WATER BOY
こんな時大活躍なのが、
この「WATER BOY」です。
水処理エース株式会社という日本の企業が製造した製品で、日本政府からツバルに2基寄贈されています。
機械の中には逆浸透膜が入っていて、海の水を汲み上げて淡水にすることができます。
普通、真水と海水の間に浸透膜があると、どちらも同じ濃度になろうとするので、真水が海水の中に浸透していきます。
でも、この逆浸透膜は、なんと!
海水の中の真水が真水側に浸透していくという優れもの。
でも24時間フル稼働しても、できる真水は1日に約560㎥。
つまり、10メートル×10メートルの部屋があったら、それを5.6メートルまで水で埋めるぐらい。
浸透膜は消耗品だし、機械を動かすための燃料も必要なので、雨水タンクの1/4ぐらいを満たす量を分けてもらうと日本円で約1,000円かかります。
雨ってすごい!
最初は水を分け合っていたツバルの人たちですが、長い水不足で病気も広がり、命に関わる不安が襲いました。
いつも朗らかで隣人思いの人たちが、水のことで争いを始めた時には、私も心が痛みました。
「明日は雨が降りますように」
と願ってベットについたある日のこと、夜中に「ザーッ」という音が!
飛び起きて外に出てみると、すごい雨!
みんな大喜びで外でシャンプーをしたり水を貯めたりしています。
私も泣きながら、なぜか自分のバイクを洗っていました。
こんな時、人は思わぬ行動に出るものなんだなーと、他人事のように思い返します。
あんなに苦労して貯めていた雨水タンクは、一晩で満杯になりました。
雨がこんなにすごいものだと思ったことはありませんでした。
次の日から、挨拶の言葉は「雨降ったねー」に変わりました。
穏やかで朗らかなツバルに戻り、ほっと胸をなでおろしました。
雨のありがたさや、日本の豊かな自然のありがたさを身をもって感じます。