南の島には、サンゴや星の砂など、土地が海の生物でできているところがあります。


今から10年前のことになりますが、私はそんなツバルに住んで星の砂を育てていました。


育てていた?! どうやって?!


こうやって。



星の砂は、有孔虫(ゆうこうちゅう)という生物が死んだ後の形ですが、その有孔虫の生態はまだよく解明されていません。


土地を作る有孔虫の生態を解明するための養殖も、わたしの仕事の一つでした。


星の砂は、星の形をしていますが、ヒトデの赤ちゃんではありません。


その証拠が、この写真。


星の砂の産卵シーンです。


星の砂は、大人なのです!


子どもと大人の有孔虫を並べるとこんな感じ。


文字通り、砂粒ほどの星の砂にも、もっと小さな赤ちゃんが。


かわいいですね。



この有孔虫、海の中では太陽の光が降り注ぐ浅瀬の、波が激しいところで藻にしっかりつかまって暮らしています。


食べ物は、太陽の光。

光合成でエネルギーを作って生きています。



年月が経ち、死んでしまうと水に流されて転がっているうちにトゲの部分が取れて丸くなります。


そして、波に打ち上げられてツバルの土地になります。


ツバルの土地を顕微鏡で見るとこんな感じ。


日本の砂と全然違う!!



トゲが取れて丸くなったオレンジ色の有孔虫が沢山あります。


だから、ツバルの砂はオレンジ色なのです。


岩だと思っていたものも、割ってみるとこんな感じ。


有孔虫やサンゴのかたまりです。


そんな有孔虫は、きれいな水でしか生きられません。


藻につかまって生きているくせに、自分に藻やコケがついてしまうと、太陽の光が届かず、死んでしまいます。


波の強いところで暮らしているのも、いつも波に体を洗ってもらえるからなのです。


でも、有孔虫が育つツバルの波打ち際が、


こんなふうにゴミでいっぱいになっています。


焼却施設はありません。


焼却炉を作れば?


と思いますよね。


でもダイオキシンが出ないような高い温度で燃やし続けられるほどのゴミの量も、燃料もありません。


南の島で一番いいのは「ごみを燃やす」ではなく、「ごみを埋める」なんですね。


ゴミを埋める土も無いので、埋めるために海から有孔虫が入った砂を持ってくることになります。


自然の堤防として機能している砂の山を、ごみの埋め立てなどに利用することで、島を守る機能が失われているのも大きな問題です。


日本も気候変動で大きな災害が増えていますが、ツバルでも今までにないような暴風雨に見舞われ、それが高潮と重なると、大きく土地が削れてしまいます。



気候変動は、極端な大雨だけじゃなく、極端な水不足も引き起こします。


私が暮らしていた時、雨が降らない日が9か月も続き、島の人たちは洗ったり排泄したりすることを海でせざるを得ませんでした。


それが風の向きと相まって、有孔虫の住む海岸がこんな状態に。



こうして、いろんな要因で有孔虫が住める場所が少なくなってきているということは、ツバルの土地を作る材料が減ってきているということです。


気候変動で島が沈むって、どういうこと?


南極の氷が解けて海面が上昇して沈むの?


と思いますが、


そもそも島を作っている材料自体が激減しているのも事実です。



飛行機から見ると、こんなに細くて薄いツバルの土地。


守りたい笑顔が詰まっています。