「値決めは経営」


これは京セラを創業し、JALを再生させた稲盛和夫さんの言葉です。


商品・サービスの価格をどうするかで、会社の利益が直接影響を受けます。


価格の設定は、経営者の大切な仕事です。


価格戦略とは


価格の幅は、

「原価からカスタマーバリューまで」

と言われます。




原価で売ったら、利益はゼロ。


カスタマーバリューというのは、お客様が「このコーヒーだったら、これぐらいの価格かな?」と思う価値のことです。


これより高ければ、買ってもらえません。


この原価とカスタマーバリューの間で、経営者が価格を設定するわけです。


原価から価格を設定する?


コーヒーの原価が一杯分50円だとします。


一杯いくらで売りますか?


よく言われるのは、コストプラス法。


コーヒー一杯を作るのに、いくらかかるかを計算し、それに利益分を上乗せするというやり方です。


「カフェやすい」の場合


例えば、「カフェやすい」のオーナーは、


原価率が40%になるように、価格を設定しようと考えました。


これだと1杯125円。


安いからみんな買ってくれるだろうと考えます。



ところが、価格を安く設定すると、たくさんの人に売らなければ利益が増えません。


一杯当たりの利益は、125円ー50円=75円です。


利益を10,000円出すためには、134人に売らなければなりません。


従業員はとても忙しくなります。



一人一人のお客様に気を配っている暇もありません。


お客さんにはサービスが悪いと文句を言われます。


なんと!店員が辞めていく理由は、価格設定だったのです!!


じゃあ、原価を下げますか?


大企業であれば、仕入れ先の選択肢が沢山あって、大量仕入れで原材料の値段を下げることができますが、中小企業は同じことはできません。


原価を下げるのは相当難しいし、それで得られる利益はほんのちょっと。


状況はあまり変わりません。



「カフェたかい」の場合


一方、「カフェたかい」のオーナーは、一杯700円で売ります。


「カフェやすい」が134人のお客さんで出していた利益を、お客さん16人で出すことができるので丁寧に対応できます。



従業員とお客さんの間にいい関係ができ、みんなやりがいを感じながら仕事をすることができます。


実は、「カフェやすい」と「カフェたかい」では、行くお客様の質も違うらしいです。


125円のコーヒーで長居をしようとするようなお客のほうが、700円のコーヒーを飲むようなお客よりもクレームが多いというデータもあります。


「カフェたかい」は、値段を上げることでいいお客さんを選ぶこともできるわけです。


価格が経営を左右するというのは、こういうことなんですね。


「それはわかるけど、でも、高いとお客さんが来ないんじゃないの?」

と心配になりますよね。


カスタマーバリューは上げられる?


カスタマーバリューというのは、顧客が適正だと考える価値のことでした。


お客さんが700円のコーヒーを、「これで700円は高いな」と思えば、カスタマーバリューは700円未満ですから、お客さんは来ません。



カスタマーバリューを上げればいいのです。


「これなら700円は納得」とお客さんが思ってもらえるよう、価値をしっかりアピールします。


原価を上げなくても、おいしい豆を一滴一滴、ドリップで丁寧に淹れることはできます。


従業員の教育をしっかり行って、おもてなしやコーヒーの知識を持ってもらうこともできます。


お店の良さを最大限発信して、700円の値段が納得いくものだということをわかってもらいます。



売れなくてもいいから、1200円ぐらいの高い豆のコーヒーをメニューに加えておくのも手です。


700円のコーヒーのハードルが下がります。




価格は、下げる努力より上げる努力を


原価から割りだす価格設定は、最低ラインを決めるのに役に立ちますが、あまり意味がありません。


なぜなら、お客様はそのコーヒーの原価がいくらか知りませんし、興味もありません。


お客様の目的は、おいしく淹れたコーヒーをいい気分で飲むこと。



それを可能にするには、価格をいくらにする必要があるのかを考える。


そしてこの価格が適切だと思ってもらえるように努力する。


それが、価格戦略です。