5フォースとPEST分析とは ~リスク回避のフレームワーク、そして農業の場合~
社会にはいろいろな業界があって、業界ごとに様々な競争にさらされています。
でも、事業をうまく行うコツは「競争に勝つ」ことではなく、「競争しない」こと。
どんな競争があるかがわからないと、回避することもできません。
今回は、敵を知るためのフレームワークを取り上げながら、最後は農業を考えたいと思います。
5フォースとは
企業が戦っているものは次の5つと言われ、「5フォース(5つの脅威)」と呼ばれています。
- ライバル会社
- 新規参入企業
- お客さん
- 供給業者
- 代替品
1.ライバル会社
例えば、パン屋さんが地域にたくさんあったら、その地域はパンの激戦区。
なぜ、「ライバル」になるかと言えば、「どんぐりの背比べ」状態だから。
「どんぐりの背比べ」状態だと、値段を安くしたりしてお客さんが自分のお店を選んでくれるようにしないといけません。
それを避ける方法としては、ほかのお店ではできない商品、できないサービスをすることがあります。
「アンパンはあっちのお店で買ってください。うちは、フルーツサンドがウリです。」
となれば、他のパン屋さんと一線を画し、「フルーツサンド屋さん」として、どんぐりの背比べから脱出できます。
2.新規参入企業
今まで平和にフルーツサンドを作っていたのに、新たなフルーツサンド屋さんが進出してきたりします。
また競争?
作りやすいものは、いろんな人が参入する危険があります。
例えば「フルーツサンドに入れる果物が手に入りにくい」などの、「参入は難しそうだな。」と思える状況を作ることができれば競争を避けることができます。
3.お客さん
お店でパンを売れば、お客さんは一般消費者、パンをスーパーやホテルなどに卸せば、そのスーパーやホテルが、お客さんになります。
「〇〇ホテルと契約して、オリジナルバターロールを作る」という状態になると、安定して買ってもらえる場所ができて安心です。
でも、一方で、〇〇ホテルのいいなりにならなければならない可能性も出てきます。
「来年度からバターロール1個40円でなければ買いません」みたいなことになったときに、「わかりました」と、相手の要求を飲まないといけない状況だと、どんどん儲けが少なくなります。
「じゃ、いいです。△△ホテルに卸しますから」と強気でいける状況を作り出しておくことで、お客さんの圧力から逃れることができます。
4.供給業者
パン作りに必要な機械、材料などを仕入れる業者です。
「〇〇養鶏の放し飼いの有精卵を使っているのがうちのウリ」などとこだわっている場合、その養鶏場が卵の値上げをしたり、前払いにしてくれなどと言われても、そこでしか手に入らないので、〇〇養鶏の条件を飲むしかありません。
〇〇養鶏とのいい関係づくりがあれば安心です。
いざとなったら契約できる△△養鶏とも関係づくりを進めていれば、圧力のない状況が作れます。
5.代替品
ごはんを食べていた日本にパンが入ってきて、日本人はごはんを食べなくなってきましたが、これと同じようなことが、パンに起こる可能性もあります。
富士フィルムも、カメラがデジタルに変わって、誰もフィルムを買わなくなりました。
それでも、フィルム製造で培った技術で、化粧品部門に参入しました。
フィルムってコラーゲンだったんですね!
こんな発想の転換ができれば、生き残れる可能性も出てきます。
このように、企業は5つの大きな脅威にいつもさらされながらそれを回避する方法を考え、実行しています。
農業は?
話は変わって、農業ではどうでしょう?
農業には「農協」という組織があり、農家を取り巻く5つの脅威から守ってくれています。
農家の人は、質のいい野菜を作ることだけを考えられる状況にあるんですね。
ただし、どんなに自分だけ質のいいお米を作っても、ほかの農家のお米といっしょに売られてはしまうわけですが。
こんな状態で農業は育ってきました。
現在、「農協」を通さずに、独自ブランドで勝負に出る農家がたくさん出てきました。
このような農家は、たちまち5つの脅威の中に、放り込まれます。
普通のビジネスではあたりまえのことですが、農業では長い歴史の中で、蓄積されてこなかった経験です。
PEST分析とは
話は変わって、企業は5つの脅威だけでなく、もっと大きな外の世界からも、影響を受けています。
それを考えるときのフレームワークに、「PEST分析」があります。
- Politics(政治状況)
- Economics(経済状況)
- Society(社会状況)
- Technology(技術状況)
これを使って、これからパン屋さんを取り巻く状況が、どう変わっていくのかを予測して、対策を考える必要があるのです。
1.Politics(政治状況)
新しく規制ができたり、新しい税金が出きたりすることなどで、パンの価格を上げなければならなかったりします。
2.Economics(経済状況)
景気のよしあし、物価の変動などで、売り上げや価格に影響があります。
3.Society(社会状況)
社会の発展状況、少子高齢化、環境問題などによって、売れるパンの種類も変わってきます。
4.Technology(技術状況)
新しい技術が開発されると、今まで難しかったことが、簡単にできるようになります。
パンづくりを家で楽しむ人も増えてきました。
再度、農業
また、農業に戻りますが、上の大きな流れは、農協でもどうすることもできません。
農家の人は、競争を回避する経験は積めずに、こうした大きな影響を受けて、事業を進めていかなければならない状況だったかもしれません。
こんな農業の課題をしっかりつかんで、課題を解決しようとする人たちが、たくさん出てきています。