トレードオフとは ~あれもこれも、は成り立たない?~
お盆真っただ中、遠く離れた家族には会いたいけど、コロナのリスクが増えるのは心配、というような悩みを抱えなが過ごす時期ですね。
このように、「あっちを立てればこっちが立たない」というようなことを「トレードオフの関係」と言います。
トレードオフとは
トレードオフとは、AとBが両立しない関係です。
例えば、「鶴の恩返し」
「絶対に機を織っている姿を覗かないでください。」とおつうさんが言います。
この時、
- すごく気になるから、部屋を覗きたい
- そしてその後も仲良く一緒に暮らしたい
という野望は叶いません。
約束を守って一緒に暮らすか、姿を覗いて出ていかれるかの2択です。
好奇心に身を任せて部屋を覗いてしまうことと、末永く幸せに一緒に暮らすことはトレードオフの関係と言えます。
世の中には沢山のトレードオフの関係がゴロゴロ転がっています。
- 自然の中で暮らしたいけど、交通の便がいいところが良い。
- マスクを外して自由に海外旅行したいけど、コロナにはなりたくない
- 毎日お酒を飲みたいし、健康な体を作りたい
などなど、どちらも叶うことは難しいですね。
ビジネスでもトレードオフ
ビジネスの世界でも、トレードオフの関係がゴロゴロ転がっています。
- 残業をさせなければ人件費が削減できるけど、納期に間に合わなくなる。
- 新しい設備を導入したいけど、借金は増やしたくない。
- 無農薬野菜や、抗生物質を使わない安全な材料で料理を作りたいけど、庶民的な価格にしたい。
などなど。
トレードオフだと気が付かずに決断してしまうと「こんなはずじゃなかった」ということがあるかもしれません。
今まではトレードオフじゃなかったのに、トレードオフの関係になることだってあります。
トレードオフになる例
A町とB町にそれぞれ店舗を構えていたラーメン屋さんがありました。
おいしいと評判で、どちらも大繁盛。
10年後、Aという場所は人口が減ってきているのに、新しいラーメン屋さんがどんどん増えて売り上げが激減。
新参者に負けてたまるか、とあの手この手でA町のお店を盛り上げようとしますが、なかなかうまくいかない。
A町のラーメン屋さんを盛り上げようとすることで、せっかく売れているB町のラーメン屋さんに注ぐべき力が足りなくなっている?
となると、ライバル店もたくさんあって人口も減っているA町のラーメン屋さんに力を注ぐことと、売れているB町のラーメン屋さんの人気を維持することは、もはやトレードオフかもしれません。
今までは、両立していたことが、周りの環境で両立しなくなっている例です。
常に、「これをすることで他のことの弊害になっていないか?」と考えるのは、大事です。
特に大企業に比べて持っている資源が少ない中小企業は、「あれもこれも」と手を広げるとトレードオフになる危険性が高いといえます。
選択と集中のビジネス
日中にTVをつけていると、謎の男性と女性が、カラオケセットなどを売っています。
この人たちが宣伝しているのは、余計な機能を取り除き、操作が簡単な掃除機やカラオケセットなど、高齢者があったらいいなと思うものばかり。
ですが、若者は振り向きもしない商品です。
この謎の男性は、夢グループという会社の社長で、通販とコンサートの2つの事業を行っています。
コンサートも、昭和の演歌歌手ばかり。
観客の多くは、60代以上です。
上演時間は、昼と夕方の二回。夕方の外出ができない人にも対応します。
コンサート会場は、県庁所在地の大ホールではなく、市民会館。
「コンサートに来てもらう」というのではなく、「足腰の弱いくてバスに長時間乗れない人、車を運転しない人のところに出向く」というスタンスが徹底されています。
そして、休憩時間は長めに取り、急がずケガをせずにトイレに行けるよう工夫。
休憩時間には握手会やサイン会も実施して、思い出に残る時間を提供。
こうして、徹底して「今を楽しく暮らしたい高齢者」をターゲットにして、どこまでもその人たちにやさしい商品やサービスを作ることで、年商150億円を達成しています。
これが、若者にも売れるものを作ろうとしたらどうでしょう?
今持っているエネルギーをそっちにも注がなければなりません。
CMに出て歌っている場合じゃなくなります。
常に、自分の会社がやるべきことを選択することで、その会社は際立ってきます。
時代も変化、社会も変化、従業員も変化、消費者も変化。
いろんなことが日々、変化しています。
何かを続けていることで、大切なことが疎か(おろそか)になったら大変です。
常に、トレードオフのことを両方やろうとしていないか、気を付けたいですね。