以前、電子帳簿保存法について、概要をさらっと書かせていただきました。→こちら


「電子帳簿保存法」と一言で言っても、実は下の3つの制度でしたよね。


制度1 電子帳簿等保存

制度2 スキャナ保存

制度3 電子取引データ保存


制度1は、主に会計ソフトを利用している人向けのものです。



制度2は、スマホで領収書を撮影すると撮影した日時を記録して、保管してくれる専用のアプリを入れてある会社のための制度です。


つまり、制度1と2は、「会計ソフトや、領収書保存アプリを入れている会社は、紙の保管は要りませんよ」という「権利」と言えます。


しかし、制度3は、

「データで受け取るすべての領収書や請求書は、印刷して取っておいても経費として認められる証拠書類にはなりません」

というもの。



高いソフトやサービスを利用していない私たちこそ、急いで対応しないといけない制度です。


令和4年1月1日から、税務署はすでにこのルールに従って動いています。


ただし、令和5年12月31日までは、「紙でも仕方ない。」と言っています。


あと1年4か月しかありません。


今回は、何が何でもやらなければいけない制度3について、お話していきたいと思います。


制度3 電子取引データ保存制度とは


エコやペーパーレスが言われ、紙で領収書をくれるところはどんどん少なくなっています。


クレジットカードの領収書も、携帯電話の領収書も、お金を払わなければ郵送してくれません。


紙で郵送されたものではなく、インターネットで送られてくる領収書などについては、印刷して取っておいても、経費としては認めてらもらえません。


認めてもらうためには、一定のルールのもとにそのデータを保管しなければならないのです。


そのルールは2つ。

1つ目は「真実性の確保」です。


真実性の確保


正真正銘、本物だという要件を満たすには、

  1. タイムスタンプが付与されたデータを受け取る。
  2. 保存するデータにタイムスタンプを付与する。
  3. データの授受と保存を、訂正削除履歴が残るシステムやそもそも訂正削除ができないシステムで行う。
  4. 不当な訂正削除の防止に関する事務処理規定を制定し、遵守する。
以上4つのどれかを必ず満たすようにしてデータを保管する必要があるらしいです。


つまり、

  1. 領収書を受け取った時点で、訂正や削除ができない状態になっている。
  2. こっちでそのような状態を作る。
  3. 訂正や削除に関する規則を作って守る。

のどれかです。


コンビニのようなチェーン店では、取引先(親会社)との専用回線でやり取りされていて、領収書などの削除はできないと考えられますので、1が満たされています。


領収書などを格納するクラウドサービスを利用している場合も、2が満たされています。


でも、そうしたシステムを利用していない場合、送られてきた領収書は、訂正はできないかもしれませんが、削除はできます。


なので、自分の会社で「削除したり訂正したりしないし、やむを得ず訂正するときは、こういう手順でやる」というルールを作って守るしかないです。


このルールの作り方に関しては、国税庁のHPにサンプルがあります。

こちらです。


ずらっと並んだサンプルの「電子取引に関するもの」の中に「事務処理規定」のひな形が用意されているので、これを活用しましょう。


可視性の確保


そして2つ目は「可視性の確保」です。


つまり、

「税務署の人が、必要な情報を取り出して見ることができる状態にしておかないといけない。」ということです。


そのために自社のパソコンやプリンターの操作説明書も必要です。


今は、紙の説明書はなくて、HPなどからダウンロードするようになっているものもありますが、その状態でもOKということです。


自分の会社にプリンターがなくても、どこかで印刷できる状態であれば大丈夫なようです。


検索要件の充足


税務署の人が検索するのは、「日時」「取引先」「金額」の3つです。


日時については、「令和4年5月1日のものを出してください。」というピンポイントのものだけではなく、「令和4年の1月から10月までの領収書を出してください。」などと一定期間のものを要求してきたりもします。


金額についても、同じように「3万円以上のものを全部出してください」などという要求もあり得ます。


そして、3つのうち、2つの組み合わせもありだそうです。


例えば、「令和4年8月の○○商店からの領収書を見せてください。」というようなものです。



この検索要求にどう対処するか


国税庁で提案しているのは、「エクセルで索引を作っておく」というものです。


それが、これです。



このデータも、先ほどの各種規定等サンプルからダウンロードできます。


このエクセルには、税務署が検索すると思われる「日時」「金額」「取引先」の項目が設定されていて、①、②、③と、ファイルの連番がつけられています。


この索引を作り、領収書のPDFは、パソコンの中か、クラウドか、CD-RやUSBなどに、ファイル名を①、②、③などとつけて保管しておくということらしいです。


エクセルで索引を作るときの注意


エクセルで索引を作るときには、税務署が検索できるよう「金額」「取引先」「日付」は絶対必要ですね。


その書き方も、ルールを決めておくことが大切です。


例えば取引先が「株式会社VIEW」だった場合、人によっては

「(株)VIEW」としたり、「株式会社ビュー」としたり、(株)が半角だったり、viewが小文字だったりするわけです。


バラバラな表記だと、検索してもヒットしません。



そうならないように、取引先の表記をどうするか、金額はどう書くか、日付はどう書くかのルールを決めてマニュアルを作っておくのが大事です。


領収書の保管


さて、索引には連番がついていましたので、この連番通り、領収書のファイルに名前を付けて保存する必要があります。


どこに保存してもOKですが、USBやCDではなく、パソコンのドキュメントや、OneDriveなどのクラウドへの保存がおすすめです。


そうすると、ファイル名でAND検索やOR検索などができますので、例えば100個のファイルの中から①と㉜と㊿を探すときなども、便利です。



というか、ぶっちゃけ、パソコンのドキュメントや、クラウドのドライブに保存すれば、索引はいらないんじゃないかと思います。


ちょっとめんどくさいですが、ファイルの名前を「日付 取引先 金額」にしておけば、ファイルの名前で検索できるからです。


この時も、取引先の名前などがバラバラな表記にならないよう、ルールを作ってくださいね。


ファイルの検索について


では、検索についてご説明します。


今回は「OneDrive」でご説明しますが、パソコンのドキュメントや他のクラウドでも同じようにできます。


まずあらかじめ、電子取引の領収書や請求書を入れるフォルダを作っておきます。


今回は、「One Drive」の中に、「電子取引データ」という名前のフォルダを作りました。




その中に、「領収書」フォルダ、「請求書」フォルダなど、電子取引で送られてきたデータを入れるフォルダを作っておきます。


1個のフォルダに、5年分ぐらいのファイルが入ると検索も楽ですね。


例えば、楽天Koboで本を買ったとします。


本を買ったら、「領収書の発行」をぽちっと押して、自分で領収書を発行します。


領収書が出てきたら、

ダウンロードをクリック

先ほど作った領収書フォルダに保存します。


これは、2022年7月29日に楽天グループ株式会社に 1870円を支払った時の領収書なので、ファイル名を

「20220729 楽天グループ(株) 1870」

として、保存します。


こうやって、領収書を保存していくと、このような状態になります。



検索するときは、虫メガネのマークのところに、検索したい文字を入れます。


例えば2022年の6月と7月の領収書を出したいとしたら


「202107 OR 202206」と入れると出てきます。




検索したい文字とORの間は、それぞれ全角スペースか、半角スペースを入れてください。


2022年のドコモの領収書をすべて見たいときは


「2022 AND ドコモ」となります。


フォルダ名で検索するか、エクセルの索引を作って検索するか、領収書の数や、取引先の数などによって、やりやすいほうを選んでください。


もちろん他のやり方もOK。


電子帳簿保存法の本格スタートは令和6年の1月1日からですが、今年いっぱい試行錯誤しながら会社がやりやすい方法を見つけ、来年はそれで試してみると、本格スタートの時はバッチリです。


税務署では、相談窓口を設置しているようですので、気軽にお問合せしてみてください。