レモン市場とは ~猜疑心が、モノの質を下げる?~
近頃、補助金などの詐欺事件が多発していて、残念な世の中ですね。
詐欺が起こるのは、受け取る人が本当に困っている人なのか、そうじゃないのかを、支払う側がわからないから。
実は、そういう世の中だと、市場もうまく回らないらしいです。
どういうこと?
レモンって、中身がわからない?
例えば、ここに艶々、ピカピカのレモンがあります。
レモンには、どれも「飛び切りおいしい甘酸っぱいレモン」と書いてあります。
Aさんは、以前ここでレモンを買って、切ってみたら中が腐っていたことがありました。
レモンって皮が厚くて、お日様をいっぱい浴びておいしく育ったレモンなのか、単においしく見えるように防腐剤やワックスで表面に細工が施されているのか、区別がつきません。
あるレモンは100円の値段がついていて、あるレモンは300円だったとします。
Aさんは、レモンには詳しくなく、見分ける方法もありませんから、おいしいレモンに当たる確率は50%と考えます。
そうすると、レモンにいくらお金が出せるでしょう?
「おいしいレモンなら、300円出してもいいけど、おいしくないやつかもしれないから、200円以上は出せないな。」と考えます。
レモンに200円しか出さなくなると、表面に細工した300円のレモンばかりではなく、品質を管理しておいしく育った300円のレモンも、お客さんに選ばれなくなってしまい、市場から消えてしまいます。
残るのは、200円以下の価値のレモンだけ。
こうした世の中は、「レモン市場」と呼ばれます。
レモン市場とは
レモン市場は、売る人はそのモノの価値を知っているけど、買う側にはその判断がつかない世界です。
買う人は「期待外れになるかも。損をしたくない」という気持ちでモノを見てしまいます。
レモン市場では、作る人も意欲を失います。
安いものしか売れないので、おいしいレモンより、安く作れるレモンを作るようになります。
質は落ちる一方です。
中古車市場の例
よく引き合いに出されるのが、中古車市場。
車を売ろうとする人は、その車をよく知っているのでどれぐらいの価値かわかります。
買う人は乗ってみないとわかりません。
事故車なのかもしれない、メーターが改ざんされているかもしれない、損はしたくないと考えます。
売る人は、自分が売ろうとしているのがいい車だと思っている時、買取金額があんまり安いと「じゃ、売らない」という選択をすることができます。
悪い車だと、「その買取価格で売ります!」という選択をします。
そんなことで、いい車は売られなくなり、市場には悪い車しか並ばないことになります。
というわけで、欠陥車のことを英語で「LEMON」と言ったりします。
レモン市場にならないために
こんな世の中にしないためには
- 詐欺師を市場から排除する
- 価格に匹敵する価値のある商品だということを、しっかりと消費者に伝える。
ということが大事です。
300円の価値のあるレモンだということを作る側がきちんと伝え、公平な立場の第三者が証明する。
それで納得して買ってくれる人が、食べて満足できれば、また300円のレモンを買います。
そうすると、レモン農家の人たちは、競っておいしいレモンを作ろうと努力します。
そして、世の中にはおいしいもの、品質の高い商品が溢れるようになります。
悪いことを隠して、その場しのぎで得をしようとするのではなく、
いいことも悪いことも全部消費者に伝えて、また次も買ってもらえる商品をつくることで、世の中はいい方向に進むんですね。
こうした世界を、ピーチ市場と言ったりします。
モモは、皮が薄くて傷つくとすぐわかるから?
レモンには気の毒なお話でした。