法人の解散 ~実録 NPO法人が成仏するまで~
昨年の秋、お友達のご家族がやっていたNPO法人が解散することになりました。
その手続きを行政書士さんに頼まずに自分たちでやってみようということで挑戦してみました。
目次[非表示]
1日目 総会の開催
人間なら誰もが「死亡」という状態に至りますが、法人は組織を構成している人が「成仏させよう」と決めないことにはその状態に至りません。
そこで総会を開催して会員から意見を聞きます。
総会で確認しなければならないのは、
- 解散してもいいか
- 残った資金はどうするか
- 清算人は誰にするか
です。
「解散」というのは、業務を停止状態にすること。
「清算人」というのは、解散状態の組織ですべての清算作業をする人で、その組織の中から選びます。
これからは、この法人が提出する書類は、代表じゃなくてこの清算人の名前で出すことになります。
皆さんの賛同を得てこの状態にするには、案内を出してから、1か月はかかります。
30日目 法務局で登記
総会が無事終わったら登記をします。
人間でいえば、戸籍謄本の書き換えのようなもの。
「私たち、解散状態です。」
というのが「解散登記」
「〇〇さんを清算人にしました。」
というのが、「清算人就任登記」で、まとめて提出することができます。
解散して清算人が決まってから2週間以内に法務局で登記することが義務となっています。
終わってしまうとはいえ、少しの間この組織を引っ張るわけですから、清算人が就任したことは大きな出来事。
清算人は印鑑証明をとって法務局に届け出ます。
提出書類は、法務局のHPに記載例があるので、ほぼコピペでOKです。
45日目 解散届と清算人就任届
NPO法人は地方自治体が管理しているので、県にも組織の状態をお知らせします。
この時に、証拠として法務局から「登記事項証明書」をもらって同封します。
登記を申請してから登記事項証明書ができるまでは、2週間ぐらいかかりました。
清算
この間に、清算人は清算作業を行います。
清算人の仕事は、
- お金の清算
- 事業の整理
- 財産の整理
です。
1.お金の清算
借りたお金を返したり、貸したお金を取り返したり、持っているものを処分してお金に換えたりして、後でトラブルにならないようにします。
官報への掲載
この組織が知らないうちに誰かからお金を貸したり借りたりしていることがあるかもしれません。
その人たちにも
「ちゃんと知らせましたよ。あとでなんだかんだ言っても知りませんよ。」
という状態を作るために、官報に2か月掲載しなければならないという義務があります。
官報なんて日常で見ることがないのですが、これが、とにかくいろんなことが載っています。
例えば、身元不明で行き倒れた人の情報も!!
「行旅死亡人」というらしく、身長や推定年齢、着ていた服、見つかった場所など、とても詳しく書かれています。
これは昔の「お触書」の現代版なんだなーと思いました。
官報の原稿用紙は、1行に22文字しかはいらず、1行3,589円かかります。
なんとか短くして費用を抑えたかったのですが、公告の文面はほぼ決まっていて、省略できる文字も決められています。
どう頑張っても10行。これだけで3万円以上かかってしまうわけです。とほほ。
公告するときのことを考えたら、組織の名前は短いほうがいいです。(笑)
これで2か月待って、なんの音沙汰もなかったので、ようやくお金の清算ができます。
申請してから掲載まで2週間、それから2か月待たなければ次の手続きに移れないので、これだけで75日かかりました。
2.事業の整理
3.財産の整理
財産目録や、貸借対照表を作り、総会で決まった通りに財産を処分します。
これで、組織の中身は空っぽになりました。
120日目 清算決了登記
清算無事終わりました!
というわけで、今度は清算決了したことを登記します。
135日目 清算決了届
登記事項証明書が出来上がったころ、それを取得して県に提出。
めでたく組織のお見送り完了となります。
小さなNPO法人でも、法人格を持った組織。
その組織を成仏させるっていうことは、大きな労力と時間と費用がかかるんだなーと思いました。
普段足を運ぶこともない法務局に出入りしたり、官報を読んでみたり、また一つ勉強になりました。