秋田県の最低賃金は、2021年10月から30円アップして822円に。


秋田県の現在の最低賃金は全国で最も低い792円、全国平均902円から110円も低い金額です。



「物価が違うでしょう?」という人もいるかもしれませんが、物価は下図のとおり。


「秋田が一番安い!」というわけでもありません。


それも、物価平均を下回っている一番大きなものは家賃。


持ち家がある人にとっては関係ない項目です。


水道光熱費などは、むしろ平均を押し上げている側に回っています。


水道光熱費、何とかしてほしい。。。という私の心の声はさておき、


「賃金は最低だけど、物価はそれほど安くない」秋田県は、単純に考えると、


「人件費を抑えているわりに、値段が高いものを作っている」ということ?



でも、コロナで大変なのに、いま最低賃金が上がって、経営者は大丈夫?


とも思います。


最低賃金とは


そもそも、どうして最低賃金があるのか?


というと、その目的は


  1. 賃金の最低ラインを決めることで劣悪な労働環境を阻止すること
  2. 所得の分配に影響を与えて日本の経済を活性化すること


の2つ。(最低賃金制度の意義・役割について)


賃金の最低ラインを決めることで劣悪な労働環境を阻止すること


「最低賃金」が生まれたことで、次の4つが可能になりました。


  1. 労働条件の改善
  2. 生活の安定
  3. 質的向上
  4. 事業の公正な競争の確保


1  労働条件の改善


お花屋さんの近くにお花屋さんができたら、そのお花屋さんよりも値段を下げて、お客さんに自分のお店で買ってもらおうとします。


商品を安く売るためには、コストを下げなければいけませんが、材料はそれほど安く調達できない。


「最低賃金」がない時代、お花を安く売ろうとすると、手っ取り早いのは、従業員のお給料を下げてしまうことでした。


最低賃金ができたことで、お給料は生活できる水準で留まることができました。


2 生活の安定


最低賃金が決まると、給料はそれ以下になることはありません。


雇用される側は、計画を立てることができて生活が安定します。


3 質的向上


生活が安定すると、仕事に対する意欲もわいて、能率が上がります。


お給料が上がると、優秀な人材が応募してきます。


優秀な人材に刺激され、従業員全体に活気が生まれます。



4 事業の公正な競争の確保


最低賃金があると、企業は「人件費を限りなく削って製品を安く売る」ということができないので、


  • 魅力的な商品を作って売る。
  • 企業努力をして製品の価格を下げる。


など、正しい競争が促進します。


こんなふうに、最低賃金ができたことで、従業員は安心して仕事に集中。


企業側も努力して正しい競争をするようになりました。


所得の分配に影響を与えて日本の経済を活性化すること


でも、最低賃金が高すぎても大変なことが起こります。


例えば、コンビニで時給900円の店員を2人雇って順調に仕事をしていたとします。


そこに、県から「最低賃金を1,500円にする」というお達しが来たら


コンビニでは、今まで通り2人は雇えなくなるので、店員を1人に減らしたり、時間を短くしなければならず、失業者が発生します。



1人の店員に仕事が集中。


サービスの質が悪くなって売り上げが落ちたり、ブラックな働き方で健康に支障が出たりします。


製品の値段を上げないと人件費が払えない状況になり、インフレが進むことも。


適正じゃない最低賃金は、失業者を増やしたり、インフレを起こしたり、そもそも無くそうとしていた劣悪な労働環境を作り出したりしてしまうのです。


適正な最低賃金を設定することは、経済の安定を維持する効果もあるわけです。


最低賃金は、日本の働き方も変える?


また、最低賃金を上げることは、最低賃金以上の給料をもらっている人達にも大きな影響があります。


最低賃金が30円上がるからと言って、全員の給料を一律上げることは大変です。


そうなると、勤続年数によって上がっていた給料が、成果主義に変わることもあります。


それに、人件費が3%上がったら、それだけの利益を上げなければなりません。


コストを減らさなければならないし、売り上げを伸ばすために高い仕事の質が求められます。


最低ラインがきまるだけでなく、日本の企業の給料の構造が変わったり、働き方が変わったり。


つまり、設定されたお給料を支払うために、企業努力を倍増せざるを得ない状況になるのです。



2021年7月16日に開催された第61回中央最低賃金審議会では、「早急に平均を1,000円にもって行きたい、でも1,000円は通過点」と言っています。


すでに1,000円以上という目標が決まっているということは、


最低賃金を引き上げることで、劣悪な労働環境をなくす


という一番目の目的もありますが、


最低賃金をあげることで、賃金全体の構造と所得の分配にいい刺激を与えて日本の経済成長を促したい。


という2番めの目的に対する意味が大きいかもしません。


むしろ、最低賃金を世界水準に挙げることで、日本の中小企業を変えたい!


とさえ、思っているようです。


現に


中小企業を支援する補助金は、下の表のように、


  • 「賃上げしたところは優遇します」とか、
  • 「賃上げしないと対象外です」とかになっていて、


「補助金の最終目的は、企業が利益を上げて賃上げできる状態になることだぞ!」というメッセージが伝わってきます。



政府は、「日本の成長のカギを握るのは、中小企業の動向」と本気で挑戦状を送ってきているのです。