MIRAB型経済とは? ~南の島は自給自足じゃない?~
自給自足、憧れる。
「自給自足」と言えば、
私が太平洋の国々に住んでいた
というと、
「むこうは自給自足なの?」とか、「産業は何?」みたいなことをよく聞かれます。
今回は、私が住んでいたツバルが自給自足か?というお話です。
ツバルは自給自足か
教科書には、「ツバルは自給自足で暮らしている」と書かれていたりしますが、実は「自給自足」ではありません。
日本だと、大昔は自給自足でしたが、
そのうち、自分が得意なものの生産者になり、それ以外のものはお店で買うことになります。
「生産」と「流通」と「消費」がぐるぐる回っています。
ところがツバルは、ほとんどが「消費」のみ。
ほかの国から買ってきては消費する。買ってきては消費する。
ということを繰り返しています。
「そのお金はどこから来るの???」
と思いますよね。
MIRAB型経済とは
ツバルなどの太平洋の小さな島の経済は、MIRAB(ミラブ)型経済と呼ばれています。
- MIは、移民を意味するMigration(ミグレーション)
- Rは、海外送金を意味するRemittance(レミッタンス)
- Aは、援助を意味するAid(エイド)
- Bは、公務員を意味するBureaucracy(ビューロクラシー)
上の4つでお金が流れています。
移民
ツバルでは、船乗りになる若者が沢山いました。
海外の大きな貨物船などで働くのです。出稼ぎですね。
先日は、私がツバルにいた時の同僚から連絡があり、今はニュージーランドでイチゴを作っているそうです。
送金
こうして、船乗りになる若者やNZでイチゴを作る友達のように、ツバルでは海外で仕事をして、家族に仕送りをします。
一見大変そうですが、山も川も町もないツバルから、ニュージーランドなど大きな国に行くのは、とても楽しいみたいで、特に若い人は行きたがるのです。
ニュージーランドに行っても、そこにできた「ツバル村」のようなコミュニティで暮らしていて、生活様式はあまり変わらないようです。
援助
ツバルには、日本や台湾、オーストラリアなど、様々な国が支援をしています。
特に、気候変動で沈むと注目されたのをきっかけに、環境保護や防災の分野で、いろんな国際協力関係者がツバルにやってきていました。
そうした人たちのプロジェクトが、ツバルの人たちを雇用したり、仕事を生み出したりしているのです。
日本は、ツバルで防災のためにAMラジオ局を作りましたが、その時は離島からも、沢山のツバル人が就活に訪れて長蛇の列でした。
そんなことでもなければ、ツバルで仕事を探すことは難しいのです。
公務員
工場も会社もないツバルで、仕事といえば「公務員」です。
ツバルでは、親戚の範囲が広くて、「またいとこ」ぐらいまでとても濃いつながりがあります。
その中に一人公務員がいると、一家安泰。
公務員の仕事の内容も、ほとんどは海外からの支援を進めていくこと。
2021年6月13日の今日、イギリスでG7サミットが開催されています。
例えばここで
「感染症が拡大した時に、どう対応するか、仕組みを作りましょう」
と決まったとします。
そうすると、たちまち先進国やWHO世界保健機構が、そのためにツバルにどんな支援をするのかを決めて、お金や人が、海外から流れてきます。
ツバルに2年半住んで政府に関わっていると、ツバルを動かしているのは、サミットだなーと、思えました。
産業は?
「そんなに援助ばかりに頼ってはいけない、何か産業はないのか??」
と思いますよね。
残念なことに、大航海時代にコロンブスに発見されて植民地になってから、ツバルは搾取されっぱなしでした。
もともと資源が乏しいし、大きな国の戦争の戦利品として、あっちの国、こっちの国と、引き渡されて、その国を豊かにするために仕事をさせられていたので、自分の国を豊かにすることができなかったのです。
そんな時代が、つい42年前まで続いていたのです。
私も、住んでみて初めて「植民地ってそういうことかー」と思い知らされました。
英雄は?
そんなこともあり、「建国の父」とか、「世界に誇る野球選手」とかぜんぜん存在しないツバルなのです。
誰か、ヒーローはいないのか?
と思って、
「伝説のようにみんなに語り継がれている人っているの?」
と物知りのおじいさんに聞いたたところ、
「10年ぐらい前に亡くなったけど、22人子供を産んだ人がいたんだよ。すごいだろう。」
と教えてくれました。
そりゃすごいわ。
どこまでも明るくて優しいツバルの人たち。
コロナが収まったら、また会いに行きたいです!