在庫管理とは? 在庫回転率UP!でコスト削減する方法を解説
「1個100円のところ、10個買えば800円!」のような広告につられて材料の在庫が膨れ上がったりします。
また、「在庫がなくなると、注文が多いときに対応できないから大目に確保しないと」と製品の在庫でスペースが占領されることもあります。
在庫が多いと管理も大変、スペースも占領、探すのに時間がかかったり、古くなって廃棄したりと、無駄な費用と労力がかかります。
この費用と労力を抑えるための、在庫管理を解説します。
在庫がゴミになる話
かなり古い話で恐縮ですが、昭和50年代、自動車整備・販売をしていた父が、「FMラジオ付きカーステレオ」を大量に安く仕入れた時がありました。それなのに、時代はすぐにCDが入るカーステレオの時代になり、山積みの在庫が日の目を見ることはありませんでした。
このように、技術が進むことで在庫がゴミになるケースがあります。
また、スマホやファッションのモデルチェンジなど、メーカーの思惑でその商品が意図的に「時代遅れ」にされてしまうケースもあります。
このように、食べ物だけでなく、すべての商品には「鮮度」があります。
「破れてもいないし、汚れてもいないから使える」という消費期限ではなく、気持ちよく便利に、満足して使える「賞味期限」を基準に商品は買われるというわけです。
在庫を抱えるというのは、いつゴミになるかもしれないものをお金を出して買って持っていることになるので、注意が必要です。
ここまでは目に見えない「賞味期限」のお話ですが、普段目にする「賞味期限」の場合も、賞味期限以内ならOKかというと、そうでもないようです。
1/3ルールとは
賞味期限ぎりぎりの商品って、なかなか手が出ません。
そういう消費者の心理から、流通業界では「1/3ルール」が誕生してしまいました。
例えば、賞味期間が6カ月の商品だと、卸業者は製造日から数えて賞味期間の「3分の1」にあたる2カ月以内にスーパーなどの小売店に納品しなければならないという「暗黙の了解」みたいなものです。
製造から賞味期限までの期間の2/3が過ぎた商品がメーカーから納品されると、正規の値段では引き取ってもらえなかったり、返品されてディスカウントショップに転売されたりします。
メーカーから卸、卸から小売り、小売りから最終消費者、というすべての段階で、商品をすべて適正な価格で売るためには、それぞれが在庫を管理して適正な数にすることが必要です。
在庫管理の仕方
在庫には、商品そのものの製品在庫と、商品を作るための材料・包装資材などの材料在庫があります。
製品在庫の管理
今まで在庫管理をやってきてなくて、これから始める場合は、製品在庫から管理を始めます。
その製品在庫の管理も、全部の製品ではなく、一番重要なものから始めます。
重要なのは、全部を管理しようとしないことです。
ABC分析を実行
「一番重要なもの」は、ABC分析で決定します。
過去3年間の商品別の売上高の平均を出して、
- 売り上げの80%を占めるものをAランク
- 残りの15%をBランク
- 売り上げの5%をCランク
とします。
Aランクの商品は、在庫が多く、欠品を出してはいけない最重要商品です。Bランクの商品は、在庫をたくさん抱える必要もなく、優先度は低い商品です。Cランクの商品は、そもそも店頭に並べる必要があるかを検討する必要があるかもしれません。
上のグラフで言うと、Aランクの商品は、「商品A」と「商品B」です。
これらの商品だけ、集中して管理します。
適正在庫を把握する
「どれだけの量を在庫として取っておくべきか?」についてですが、必要十分な量を「適正在庫」と呼びます。
今回は、「〇〇日分」という単位を使います。
「一日に平均3個売れる商品を、何日分在庫するか」その日数を出すには
適正在庫(日)=発注頻度(日)+リードタイム(日)+安全在庫(日)
という式を使います。
「発注頻度」というのは、「どんな頻度で商品を注文するか」です。例えば、一週間に一回注文する場合は、発注頻度は1週間、つまり7日になります。
「リードタイム」というのは、「注文してから商品が届くまでの日数」です。例えば今日注文したとして、届くのは3日後であれば、リードタイムは3日です。
「安全在庫」というのは、売り上げのばらつきを見て計算するのが一般的です。
毎日ほぼ同じ量だけ売れるような商品と、2個しか売れない日もあれば10個売れる日もある、というような商品では、安全在庫は変わります。
計算式は「安全在庫=1.65×√リードタイム×日別平均出荷数の標準偏差」となりますが、難しい計算をしなくても「万が一の時もあるから5日分ぐらい余裕を持たせておくか」というように勘でやってみて、だんだん「どうやら3日分ぐらいで大丈夫そうだ」というように、精度を上げていくということでOKです。このやり方で管理すると、次の図のように、大量に余ることも、欠品を出す心配もなくなります。
こうしてAランクの商品の在庫管理ができれば、倉庫の棚はすっきりし、一番重要な商品を大量に余らせることも、欠品を出すこともなくなります。
材料在庫の管理
材料在庫の管理も、基本的には製品在庫と同じです。
大量買いの割安感に惑わされず、賞味期限内に消費することを念頭に置きます。
労力をかけずに在庫管理ができる2つの方法をご紹介します。
発注点方式
発注点方式というのは、注文する仕切り線を作って、そこに達したら発注をかける方法です。下の図では、A4のコピー用紙を使い続けて「注文してください」の仕切りが入ったところまで使ったら発注するというやり方です。「注文してください」の仕切りをどこに挟むかは、前述した「適正在庫」の式を参考にしてください。
ダブルビン方式
ダブルビン方式は、2つの容器を用意し、一方の容器が空になったら、発注する方式で、本来は比較的単価の低い在庫や商品が対象です。目で見える管理として、非常に分かり易い手法です。また、古いほうから先に使う「先入れ先出し」も出来ますし、在庫台帳も必要ありません。
このように在庫の無駄を省いて回転率をよくすることで、コスト削減になります。
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