「そのパソコン、もう減価償却終わってるから」などと言っているのを耳にしたりします.

減価償却をしないと、税金を多く払っているかもしれません。

今回は、この減価償却を解説します。

減価償却とは

上の絵のように、ジャガイモのタネイモ(資産)は、畑に植えると時間をかけて栄養(費用)を提供しながら、たくさんのジャガイモをつけて、自分は小さくしぼんでいきます。

会社の資産も、会社のために使われながら、価値は小さくなっていきます。

例えば車。新車で120万円で買った車は、会社の仕事で走り回って、会社の利益を増やしながら、古くなって資産としての価値を減らしていきます。120万円で購入した車を、5年後に120万円で売ろうと思っても売れません。

こんなふうに、「時間がたつと資産の価値は下がっていくんだから、帳簿上も資産価値を減らして、その分を費用にしようじゃないか」というのが減価償却です。



どうやって計上するの?

では、どのように減価償却を行えばよいのでしょうか?

いつやるの?

減価償却の作業は、決算の時に行います。月次決算をやっているところは、月ごとに。年に一回決算をしているところはその時に。

いくら減価償却するの?

再び120万円の新車で考えてみます。

車を何年で廃車にするのかは人それぞれ個人差がありますが、「何年使えるか」というのを「耐用年数」といいます。国税庁のHP「確定申告書等作成コーナーよくある質問」のページに資産の耐用年数表があります。この「耐用年数表」は、「国が定めた会社の資産の耐用年数」ですので、これに沿って考えます。

耐用年数表では、運送業社やレンタカー業社など車を酷使する業種と、それ以外の業種で車の耐用年数を区別しています。運送業者などではない場合、一般車両の耐用年数は「6年」となっています。購入した時の120万円を6年間で消化するイメージです。

120万円÷6年間=20万円

となり、毎年20万ずつ費用として計上すればいいのです。

このように、購入した時の金額を耐用年数で割って減価償却費を算出する方法を定額法といい、一般的な方法です。

記帳はどうやるの?

帳簿に記帳するときには、車は「車両運搬具」という費目になります。

記帳の方法には、「直接法」と「間接法」というのがあります。

直接法

例えば現金120万円で新車を購入したときは

(借方)車両運搬具  1,000,000  現金 1,000,000(貸方)

という仕訳になり、現金が100万円減って、そのお金で「車両運搬具」という資産が100万円分増えました。

一年後には

(借方)減価償却費 200,000 車両運搬具 200,000(貸方)

という仕訳にして、車両運搬具という資産の価値を20万円減らし、費用になる減価償却費を20万円増やします。

2年後にも

(借方)減価償却費 200,000 車両運搬具 200,000(貸方)

です。

これを毎年やっていくと、6年後には車両運搬具の価値は0円になります。もちろん6年たった後でも車が使える状態であればいくら乗っていても全く問題ありません。その場合、まだその資産が残っていることを忘れないように6年目の帳簿では

(借方)減価償却費 199,999 車両運搬具 199,999(貸方)

という仕訳にして、車両運搬具の資産を「1円」残しておきます。これを「残存簿価」といいます。

間接法

例えば現金120万円で新車を購入したとき

(借方)車両運搬具  1,000,000  現金 1,000,000(貸方)

となり、現金が100万円減って、そのお金で「車両運搬具」という資産が100万円分増えました。ここは、直接法と同じです。

一年後には

(借方)減価償却費 200,000 減価償却累計額 200,000(貸方)

2年後には

(借方)減価償却費 200,000 減価償却累計額 400,000(貸方)

というように、「減価償却累計額」に減価償却を積み上げていきます。

このように、「車両運搬具」という資産の額は減らないのですが、「減価償却累計額」というマイナスの資産を計上するので、間接的に資産が減っていきます。

直接法と間接法、ぶっちゃけ、どっちでもいいです。

ずっと昔に買った資産の減価償却費

実は、平成18年度以前の税法では、「使用期間が終わったときに、買った時の10%の価値が残っている」という前提で、減価償却費を算出していました。

「120万円で購入した車は、使用期間を過ぎても12万円で売れるだろう」という想定です。

ですので、平成19年3月31日までに購入した資産は、買ったときの金額の90%を耐用年数で割って減価償却費を計上して、最終的に10%が資産として残るようにします。

詳しくは、国税庁のHP内、所得税青色申告決算書 3ページ目の記載例 で確認してください。

どんなものを減価償却するの?

いままで、車を例にして減価償却費を見てきましたが、減価償却の対象となるのは、「固定資産」と呼ばれるものです。

会社が購入するものは、えんぴつやコピー用紙などの消耗品と、パソコン、機械、自動車、土地、ソフトウェアなどの固定資産に分かれます。

ざっくり言うと、購入価格が10万円未満のものは「消耗品」、10万円以上のものは「固定資産」とします。

固定資産は、「有形固定資産」と「無形固定資産」に分かれます。土地、建物、工具、器具及び備品、車両運搬具などは「有形固定資産」、ソフトウェア、特許権などは「無形固定資産」と呼ばれます。


そして、有形固定資産の土地や無形固定資産の特許権などは、「時間の経過で価値が減っていくものではない」ということで、減価償却しない資産となります。

また、青色申告の場合は、30万円未満で購入した資産は、耐用年数で等分しないで、購入したその年に一括で費用化してしまう「少額減価償却資産の特例」というものも選択できます。
「30万円を何回にも分けて毎年計上するのが面倒だ」という方は、こちらを選択するのもアリです。

減価償却しないと税金を払いすぎる?その1

新車で120万円だった車、その一部を毎年「費用」として計上できれば毎年の収入からその分の経費が落ちていきます。これをやらないと、もしかしたら税金を払いすぎているかもしれません。

今回は、個人事業者として青色申告をしている経営者の方を前提に考えてみます。

青色申告の場合、提出書類は、

  1. 所得税青色申告決算書
  2. 確定申告書B
  3. 添付書類

になりますが、「1.所得税青色申告決算書」の1ページ目が、下の表です。


この表のように、所得税は

売上額ー売上原価ー経費ー必要な控除額=所得

として出てきた所得に応じて税額が計算されます。

売上額から引かれるものが大きいほど所得は小さくなりますので、所得税も小さくなります。減価償却費は、上の図の四角枠で囲ったように、「経費」になるので、売上額から差し引かれる「経費」が数年にわたって計上されて、そのあいだ所得税を減らすことができるというわけです。

減価償却をしないで、高額なものを買った年にその全額を費用にしてしまうと、所得がマイナスになってしまうことがあります。そうなると、その年だけ税金は0になりますが、次の年からは普通に税金がかかります。

例えば、下の図のように、毎年1,000万円の売上、700万の売上原価、経費が100万円かかっている会社が、10年使える500万円の機械を買ったとします。

減価償却しないで、一気に経費として計上すると、経費がまるっと500万円増えるので、もともとの経費100万円+500万円で600万円になります。



上のように、10年間の税金は合計540万円です。

減価償却した場合は、毎年の経費が50万円ずつ増えるので、もともとの経費100万円+50万円が10年間続き、

となり、10年間の税金は合計450万円です。

税金だけでなく、最初に利益が急激にマイナスになったり、10年使っているのに費用が計上されなかったり、実態に合わない帳簿になってしまいます。

減価償却しないと税金を払いすぎる?その2

減価償却は、資産を減らして、費用に変えていくということでした。

前半にも書きましたが、減価償却する資産というのは、「固定資産」です。

「固定資産」には「固定資産税」がかかります。

減価償却をしないと、「固定資産」の金額がずっと変わらないので、ぼろぼろの中古車に、買ったときの金額の固定資産税を払うことになってしまいます。

実態に合った利益の把握と資産の管理に、決算時に忘れずに減価償却を行いましょう。


今回は、「減価償却ってなに?」というのをお伝えするために、実務的なことは省かせていただきました。

実際に会計の実務を行うときには、税理士さんなどに聞いてください。
個人事業者の確定申告には、こちらを参照してください。「国税庁 個人事業者の方の確定申告」