ぐらっと揺れるたびに、大震災を思い出して不安になります。

「緊急事態に遭遇しても、会社が受けるダメージを最小限にとどめながら、一番大事な事業は続けられる、またはなるべく早く運営できる状態にする。」

これが、企業が生き残れるかどうか、その後成長できるかどうかを左右します。

宮城県名取市でリサイクル業を営んでいる「オイルプラントナトリ」は、東北大震災の時、沿岸近くの工場がほぼ全滅だったそうです。

でも、BCP(事業継続計画)を整えていたおかげで、なんと、震災後約1週間で廃油回収業務が再開でき、震災からおよそ10日後には、残ったタンク車と設備で工場の排水を中和処理できるようになったのです。

震災で、工場が全壊しながら、10日後には仕事ができてる会社なら、お得意様も安心して取引できます。

事業継続対策を行っている企業には、融資制度もありますので、やらない手はありません。

BCPの策定


では、BCPの作り方をご紹介します。

BCPづくりの目的の設定


BCPをつくるのは、次の3つのためです。

  • 自分と従業員の安全安心の確保
  • 運転資金の確保
  • 取引先や地域社会に迷惑にならない

そして、上記3つのために次のことを行います。

  • 災害の想定
  • 絶対継続しなければならない事業の決定
  • その事業の継続のためにしなければならないことを決定

では、具体的に見ていきます。


災害の想定


災害の想定を行いますが、日本は何といってもまず「地震」です。

内閣府の防災担当部署で、「都道府県別地震被害想定概要集」というものを出しています。

これには、県別で想定される震度と、液状化のマップや、ライフライン(電力、上水道、電話・通信)の支障の想定マップも出ています。

これで、会社がある場所に、どれぐらいの規模の地震が来て、どんな被害が想定されるかを確認します。

国土交通省わがまちハザードマップでは、細かい住所まで絞った洪水・火山・津波・地震などの情報が入手できます。


これで、可能性のある災害の種類や規模、被害が確認出来たら、次のステップに進みます。

絶対継続しなければならない事業を確定


通常、「売り上げの8割は、2割の事業で決まる。」と言われます。

「これだけは続けないと!」という会社の生命線ともいえる事業が何かを決めます。

全部の事業を続けようと考えず、「このお得意様にだけは届けなければ」とか、「このラーメンだけは続けたい」というように、売り上げの大きな部分を占めるものに集中することが、BCPを実行するうえで大事です。

中核事業を復旧させる目標時間の設定


継続する事業を決めたら、それをいつまでに復旧させるかを決めます。

  1. お客さんがいつまで待ってくれそうか。
  2. 会社の資金繰りがいつまで耐えられそうか。


この2点から目標復旧時間を定めます。


①については、経営者の「勘」が大事。大きな取引先があれば、そこと相談して設定することをお勧めします。

②については、

基本的には、預金・現金額/家賃・水道光熱費・給料などの固定費×30日=持ちこたえられる日数ですが、商品や機械、家屋の破損などの修繕費用と入ってくる保険料が差し引きされます。


①と②のどちらか少ない日数を選択し、遅くてもその日数での復旧を目指します。


 事業を継続するときのボトルネックを見つける


事業の復旧日数目標に対して、会社のある場所の被害想定調査をチェックして、ライフラインがどれぐらいの日数で普及するかを調べます。


例えば「地震被害想定 秋田」などで検索すると、災害時にどれぐらいでライフラインが復旧するかなどを調べることができます。


下の表は、「秋田県地震被害想定調査」をもとに、作ったものです。


例えば、少なくとも10日で復旧しないと会社が立ち行かない、いろんなところに迷惑がかかるなどとすると、10日以内に復旧できないものを調べておきます。


 上の表でみると、「上水道の復旧想定は18日だから、事業の復旧目標の10日には間に合わない、都市ガスは3日で復旧するので大丈夫」などと具体的なネックがわかります。


資金調達の検討


いくら地震対策をしていても、建物の崩壊や機械の破損などがあれば復旧のために資金がかかります。


災害時対応貸し付けや共済などの制度をあらかじめ把握しておきましょう。


自然災害に対応していない保険もあります。保険の条件についても確認しておきましょう。


災害時に受けられる融資についても、事前に条件などを確認しておきます。


 対策や代替手段の検討


上記の例でも、10日目に再開しようとしても、下水道復旧まであと5日、上水道復旧まで8日かかります。


その間、トイレはどうするか、水の確保はどうするかを考えて準備します。


この時に、「やること」、「担当者」、「期限」をしっかり決めないと、何もせずに終わってしまいます。


「何を、誰が、いつまでに」を明確にして責任をもっていざという時の準備をします。


取引先などとの共通認識を持つ


目標の復旧時間や方向性が見えてきたら取引先にも伝え、下記について共通認識を持ってもらいます。


  • 災害発生から復旧までの日数
  • 緊急時の連絡先

 安否確認と取引先との連絡手段を考える


緊急連絡網を整備し、すぐに全社員の安否確認ができる体制を整えましょう。

例えば無料通信アプリのLINEで、会社のグループを作っておけば、一斉に全員の安否を確認できますので、おすすめです。

今後、実施すべきことを整理し、計画的に進めていく


今後実施すべきことをまとめて書き出してみます。

大きく分けて次の3つについて、具体的な計画を立て、「何を、だれが、いつまで」やるかを決めます。

  • 従業員の安全確保、教育・訓練 (何を、だれが、いつまで)
  • 設備対策、代替手段の確保 (何を、だれが、いつまで)
  • 緊急時の資金確保 (何を、だれが、いつまで)


1年間の活動を総括してBCPを見直す


BCPは、作って終わりではなく、実際に使えることが大切です。訓練やシミュレーションを通して実践しやすいものに改善していきましょう。


BCP策定は、フォームを埋めるだけ!


どんな災害が起こるかも想定できて、継続すべき事業も決まり、何をすべきかもわかったところで、便利なフォームのご紹介です。

頭の中でば、「災害が起こったらこうすれば大丈夫」と考えていても、いざ書き出そうとすると具体的なことが決まっていなかったり、やらなければならないことが見えてきます。

中小企業庁が作成した中小企業向けのBCP対策用のフォームは、埋めていくだけで事業継続計画が作れますので、ぜひご活用ください!↓

経産省の認定で補助金が有利に!!


BCPが策定できたら、ぜひ経済産業省の認定を受けましょう。

「事業継続力強化計画」は、中小企業が策定した防災・減災の事前対策に関する計画を経済産業大臣が認定する制度です。

認定を受けた中小企業は、税制措置や金融支援、補助金の加点などの支援策が受けられます。 詳しくはこちら↓


BCPをうまく回すコツ


昨年の帝国データバンクの調査では、実際にBCPを策定している企業は15%。徐々に増加しているとはいえ、まだまだハードルは高いです。

社長が率先して、社員全員にかかわってもらうようにするのが、続くコツです。

自主的にやりたい人がいれば、手を挙げてもらい、会社全体でBCPに取り組みやすくする環境を作ります。
 

反対する社員がいたら、その人もチームに入れて、反対の理由などを聞くと、BCPに消極的な人も納得できるBCPができあがります。

仕事が増えるだけでは大変なので、災害防止賞などを作って表彰するなど、インセンティブを設けます。

社員全員が、会社を客観的にみることや、災害時の役割を認識することは、災害時に役に立つだけでなく、事業を引き継ぐときなどにも役に立ちます。

外部調達で無理のない効果的なBCPを


規模の小さい企業にとって、自社だけでBCPに取り組むには限界があります。

情報システム(サーバ等)や生産工程の一部をアウトソーシングするなど、外部と連携して緊急時に備える対応も効率的!

最近では工業団地やサプライチェーンの企業全体でBCPを策定するケースも増えています。

緊急時における協力意識は、連携企業全体の防災力や事業継続力向上につながります。