賃上げ対策とは ~助成金と価格転嫁で乗り越える~
来月から最低賃金が大きく上がります。
秋田県は、日本で一番遅い来年の3月31日から。
つまり、遅くても来年の3月31日以降に支払う給料は、最低賃金をクリアしていないといけないということです。
同じ業種でも、隣の会社が賃上げしたら、自分のところも3月31日まで待ってられないかもしれませんね。
従業員の人たちは、「隣の会社は賃金が上がったのに、うちはまだだ」とか不満をこぼすかもしれませんから。
10月1日から一斉に始まれば問題ないのに、秋田県は猶予期間が長い分、経営者の人が悩む期間も一番長いかも。
今回受けたご相談は
- 最低賃金が上がったので、それに合わせなければいけなくなった。
- 最低賃金はクリアしているが、今のお給料では人材が集まらないので賃金を上げざるを得ない。
- 今後人材を育てるために評価制度を見直して、成果をきちんと給与に反映したい。そのために賃上げが必要になる。
というように、大きく3つに分かれました。
人件費を把握
どの場合でも、賃上げ以降実際に人件費がいくら必要になるのか、ちゃんと数字を把握することが大事です。
お給料を上げるとその分社会保険料も上がります。
ボーナスや退職金などに影響を及ぼす場合もあります。
社会保険料はお給料の15%ぐらい想定する必要があります。
「この前値段を上げたばかりなのに、この賃上げでまた値段を上げないといけないのか!」
と心配してこられたラーメン屋さんもいらっしゃいました。
でも計算してみると賃上げをしても今の価格で必要な利益が得られることがわかり、ほっとして帰られました。
ちゃんと数字を把握することで、余計な心配が減る場合もあるのです。
補助金の活用
政府では、
- 賃上げをしたら設備投資のための補助を出す
- 賃上げしたら人材育成のための補助を出す
など、助成金や補助金をいろいろ用意しています。
ぜひ利用しましょう。
こうなると、秋田県のように猶予期間の長いところは断然有利!
補助金活用の対策期間が長い♪
業務改善助成金
「賃金を上げるので、その分業務効率化をしたい」という企業は、業務改善助成金が使えます。
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001471309.pdf
業務改善助成金は、賃上げとあわせて職場の効率化につながる設備を導入すると、その費用の多くを国が補助してくれる制度です。
この助成金を使いたい場合、県の賃上げ期日よりも前に賃上げをしておかないと対象外になりますので、注意してください。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、パート従業員のキャリアをアップさせるための助成金。
https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001512366.pdf
- パートの人を正社員にする
- パートの人の賃金を上げる
などで、助成金がもらえます。
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、私が相談を受けた「人材を育成していきたいので、評価制度を導入すると賃上げの必要が出てくる」みたいな企業にはぴったりです。
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001469655.pdf
助成金には、申請時期や書類提出などの条件があるので、労働局などに相談してみてください。
価格転嫁と助成金の組み合わせで乗り切る
助成金は、いつまでももらい続けることはできません。
でも、人件費はこれから継続して支払っていくものです。
人件費や原材料費の上昇分は、価格に反映させないと会社の経営は成り立ちません。
ぜひ、価格転嫁を検討してください。
今月は「価格交渉促進月間」
価格交渉するなら今です。
「うちは下請けで、取引している大きなところに価格の交渉なんてできない」と言う時代は過去のもの。
発注側の企業は、結構国からプレッシャーを掛けられているのです。
「下請けの企業に、ちゃんと自分から『価格交渉に来ませんか』と声をかけてますか?」
って感じで。
2025年3月現在、「うちも苦しいので価格上げてもらえませんか?」とお願いして相手の会社が動くのが6割弱。
3割以上は、「おたくも賃金も上がってますよね?価格の話しましょうか?」と相手側から言ってくるケースなのです。
そして、下請け企業は元請け企業に点数をつけます。
「うちの元請けは価格交渉しようなんて言ってきてないな、10点満点の3点だ!」
というように。
その平均点を厚生労働省がアからエの4段階評価し、ホームページで公表しています。
つまり、価格交渉に関して下請けが元請けの成績表をつけて、それが厚生労働省のHPで公開されているわけです。
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/follow-up/dl/202503/result_02.pdf
これでは、発注側の企業もいばってられません。
この機会に助成金をもらい、価格を上げて、従業員を育てて業務改善しながら賃上げの壁を越えていきましょう。