研修の良しあしとは


近頃、研修会などで、人の前でお話をする機会が増えてきました。


そんなときに思い出すのが、2年前に参加した研修で、講師の先生が最後に話してくれたひと言です。

「この研修がためになったか、つまらなかったかは、講師の責任ではなく、聴いている人の質の問題」

初めて聞いた時は、わかったような、わからなかったような感じだったのですが、今となってはめちゃめちゃ同感です。

これは、私の話し方が下手なことの言い訳ではなくて(笑)
講師の役割への認識が変わってきたから。

最初は、
  • ためになる話をしなければ
  • 興味を持ってもらえる話をしなければ
と思っていました。

それが、回を重ねるごとに、
講師の役割は「場づくり」だ
と思い始めたのです。

ためになる話を一方的に届けるのではなく、研修の場を参加者と一緒に作り上げること。

だから、参加者の質も、影響するのです。

コンサート会場でも、ノリのいい聴衆がいれば、
ミュージシャンは歌にも熱が入り、パフォーマンスが爆上がりしますよね。


歌そのもの以上に、その場の一体感が、聴衆の満足感を生むと思うのです。

その点、クイーンのフレディ・マーキュリーは天才でした。

彼は、歌っている自分が主役ではなく、コンサートそのものを聴衆と一緒に作り上げる作品のように考えていたのだと思います。

フレディと一緒にするのはおこがましいですが、
研修という「場」も、受け手と話し手の共同作業で成り立っている。

そんな感覚が最近しっくりくるようになってきました。

プロダクトアウトでもマーケットインでもない?


初めて研修を依頼されたころ、私はプロダクトアウト思考だったんだと思います。

プロダクトアウト思考では、
「いいものを作れば、お客さんが買ってくれる」
という考えのもと、製品の質の向上を図ります。

これは、私が最初に思っていた
「いい話をすれば、聴いている人が満足する」
という考えと、構造がよく似ています。

その反対の考え方が、マーケットインです。

お客さんのニーズを調査し、それに合った製品やサービスを提供する。

自分がいいと思ったものじゃなく、
お客さんがいいと思ったものを提供することになるので、違いはあります。

でもよく考えてみると、
「いいものを作れば」が
「お客さんのためになるものを提供すれば」
に変わっただけで、やっぱりどちらもお客さんを受け身に置いていますよね。

でも、講演も、商品も、
本当に価値が生まれるのは、相手がリアクションしたとき。

提供されたときではないのです。

私の目の前にいる人たちは、私の話を聴きに来ているわけではなく、一緒に場を作ってくれる人達。

商品を買った人達も、それで新しい体験をするときに初めて、その商品の価値が作り上げられると言えます。




これからは「共○○力」?


そう考えると、企業の役割も変わってきているのかもしれません。

「商品やサービスとお客さんが一緒に生み出す価値をつくることが、企業の仕事」というように。

近頃よく「共○○」という言葉を見かけるようになりました。

共感、共創、共鳴、共育……どんどん「共○○」が生まれています。

人・モノ・カネ・情報と並んで、

これからは企業の資源に「共○○力」が加わる時代なのかもしれません。